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たんかばいの妖しい夜 [小市民ぼうちぎり]

「セット販売ね」
「これらを 1 本ずつね!」
「各自が焼いて食べるようにして」

「それからドリンクつけてね」

「豚汁は 1 杯ね」
「女の子だけ 2 杯でもいいけど!希望があれば」
「しょんぼりしている娘がいたらみかんをあげて」
「おっさんにはサービスしなくてもいいから」

「それから、、、」

ちょっと!ちょっと~!
それ!だれがするの?!
まさか!あたしではないよね。

いろいろ都合があって
「ほんの少しだけ手伝って!」といったけど
なんでこんな七面倒くさいこと
ひとりでやらねばならないの!

炭はおこさなければならんし。

「もう!お客がくるから早く!早く!」
「暇なときにはビールを飲んでもいいから」

しょうがないねぇ!
ビールは飲まないから日当はずみなさい。



あ~!ようこそ!
(ドリンクはなんでもいいといっていたから)
(隣の居酒屋が持て余して回してきた)
自家製の「朝鮮(高麗)人参酒」でも
知る人ぞ知る!知らん人は知らん「またたび酒」でも
(なぜかやけに濁っている)自家製の梅酒でも
たっぷり飲んでくださ~い。

「それ!おいしいの!」

まずいに決まっています。

「まずいもの!売らないでよ」

でも!効くんです!

「なにに?」

いえません!でも!効くんです。

「ホントに?」

10 人中 7.45 人には効くんです。
店主がいない今ならナイショでド~ンと
1 合ばかり入れてあげます。

男性も女性も朝までドッカ~ン!ぱっか~ん!
あへあへ!です。

私が銭湯のニューヨークにいたころ
マンハッタンやレディハッタンやヤリハッタンやらで
チョーはやったあの不法なクスリより効くんです。

「不法なクスリを試したことがあるの?!」

クスリを包んでいた紙をなめたこと!あります。

あたしゃ!インチキ啖呵売(たんかばい)かぁ!

そんなことをいっていたら
そんな妖しげな酒が 3 杯も売れました!
すごいですね!世間は。



「おい!生ビールくれ」

還暦近いほどのいい年のじじいがやってきました。

セット販売しています。
単体では売れません。

「アテ(大阪弁でつまみ)はいらん!」
「ハラ減っていない」

「すぐ帰る」というので
生ビールは 400 円というと
「なんで紙コップ 1 杯がそんなに高いんやぁ!」

400cc の紙コップですよ。
360cc 以上入るのですよ。
発泡酒や第三のビールじゃないんですよ。
イヤなら売らない!といえば「くれ」
どっちやねん!

「その焼いているイワシはなんぼや?!」

「単品では売りません」

売れ!売らん!の押し問答。

「あたし食べないからあげる」

やめてください。
お客の!やさしい女の子ですが!なんだかねぇ。

じじいは受け取ってむしゃむしゃ食べています。
タコの足ももらって食べています。
まだ他にも手を出そうとしています。

どこが「すぐ帰る」だぁ!?
どこが「ハラ減っていない」やぁ?!

人の道をはずれたこ汚いことばづかいと
羞恥心の欠如した横柄な態度!
私が一番虫酸(むしず)の走る
しつけのできていないおとな。
ま!自分のことは棚に上げて!すみません。



「おい!聞かんかぁ!」

80 歳を越えたじじいが加わりました。
「なにもいらない」といって大声をあげています。

いらないのならくるなよ!

「オレは現役やぁ!」
「この年で!現役で働いとるぞ~!」

知りませんがな。

「現役のせんべい屋やぁ!」

「せんべいを焼く職人さんですか」
「手焼きはおいしいですよね」
やさしい若ものたちが答えます。
相手にしないでといったでしょ。

「バカも~ん!だれが下っ端の職人やぁ!」
「だれが手で焼くかぁ!」

なんとかいう機械は千なん百万円しただの!
餅つき機のなんとかいう性能のものは
2 百万某したのだの、、、と
工場の機械の自慢ばなしを
異業界のわれわれにいったってねぇ。

生い立ちから延々と
出世譚(しゅっせたん)はだんだん熱を帯び
より力が入るのは家族の悪口。はは。
そうとう!家庭内不和!?
というより
家族に疎外されているようですなぁ。



それが両巨頭(!)ですが
女性客が歓談しているのを見つけて
真夏のろうそくの火を恐れない虫のように
他にも加齢臭じじいが寄ってきます。

店主にでんわ。

じじいどもの
首根っこをつかんで空き地に捨ててきてもいい?!

「あかんやろ」

大丈夫!
各種格闘技を習得しているから!
通信教育(!)だけど。

「お客さんに手をかけたらあかんやろ」

じゃ!どうすんのよ!?
かれらは「お客」じゃないと思うけどなぁ。
あんたがやってきて相手をしなさいよ。



生ビールをたくさん売れと
エラそうにいっていたけど
希望があったので!(無理やり需要喚起させて?)
死蔵品やら缶チューハイ(!)やら
あるものなんでも売りました。
売れましたねぇ。

ことばでごまかして売ったみたいですが。

試供品(?)の日本酒のカクテル(?)数本!
日当代わりにくれました。

それだけ!?
バカやろ~!現金を出せ~!

今度はこっちがじじいの代わりになるぞ。

まぁいい!
明日から当分!無銭飲食をするから。
フカ(といわれるほど飲む)の姉御を誘い
竹鶴(ウイスキー)をガバガバと。

「やめてよ!高麗人参酒だけにしてよ」

まずくて!なんにも効かんもん!いらん!



「大変やったんやて!?」

翌日!道で会った飲み屋の女将がいいます。

だれに聞いたの?情報早いですね。
大げさにいってみただけで!
それほどでもないですよ。

「あのクセの悪いの!相手にしたらあかん」

たとえ道で声をかけられても
聞こえないふりをして
急いで通り過ぎるにかぎるとか。
川でおぼれていても
くるまにはねられていても
「見てみぬふりをしなければあかん」とか。

店にきたらどうすんのよ?!
逃げられないでしょ。

「水をジャージャー出して洗いものをしたり」
「疲れて眠い顔をしてときどき生返事をしておく」

そのうち怒って!あきらめて!
新しいターゲットを求めて出て行くそうな。

「ま!そうなるまで 30 分以上かかるけどね」

水商売って卑屈なものですね。



(これはフィクションです)
(特定のモデルはありましぇん)
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