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地上の霜 李白の不用意 [うそ八百]

毎日寒いですね。
たぶん世界一
ヒートアイランド化が進んでいる大阪にも
霜が降りたニュースが流れるころ。

李白の「地上の霜」を思い浮かべました。


牀 前 看 月 光
 (しょうぜん げっこうをみる)

疑 是 地 上 霜
 (うたがうらくは)
 (これ ちじょうのしもかと)

挙 頭 望 山 月
 (こうべをあげて さんげつをのぞみ)

低 頭 思 故 郷
 (こうべをたれて こきょうをおもう)


この五言絶句のタイトルは
もちろん「静夜思」ですが。

とりたてて漢詩が好きな訳でも
お勉強熱心でもありませんが
1 度はどこかで出会ったような詩。

「ガッコーで習ったはずよ」

アラフォー(around 40)の生意気な!
いや!たぶん!ただ発情しているだけの
女史がいいますが。

「そりゃぁ!小学校の教科書には
「のっていると聞きましたが。

「え?高校でしょ」

「北京の統一小学校教科書。

「日本のこと!いいなさい」

「おら!ニッポンの
「高校には行ってましぇ~ん。
「おフランス人ですけん。

中国の教科書版は
少し漢字が違うそうなのですが
大意には問題がないようです。

伝書によって字句の異同があるのは
どうしてでしょう。

そんな「静夜思」の考察は
武部利男論文が詳しく
私は大筋それの請け売りですが。



「牀前」の「牀」は
「寝台」のことと
どの先生方も平易にかたづけています。
「ベッド」でいいのでしょうか。

「ベッドの前の月の光を霜かと思った。
「山にかかる月を見た。
「ふるさとを思った。

その詩の姿(?)をながめただけで
だれでもそんな意味だと思うのですが。

江戸の文人の服部南郭は
「不用意の詩ぢゃ」と書き残しています。
技巧をこらさず!
口から出たままということかな。

しかし!平易な漢字の連なりゆえに
詳細はよく分からず
人によって解釈にずれを生じます。

「いつなのか?

寝る前なのか。
目覚めたときなのか。
寝床にきたときなのか。
寝床といっても寝るばかりではなく
大きなベッド状のくつろぎの場所で
ずっとそこにいたのか。

「牀前の地上の霜とは?

霜はだいたい地上にありますがね。

屋外の月光か!屋内のそれか。
ほとんどの人が
屋内に射し込む月光じゃないと
詩にならないという解釈?!

屋内の月光なら
井伏鱒二がいうように
李白の寝室にガラス窓があるはずがなく
戸や窓が開かれていなければ不可能!?



私はふと思います。

この詩の季節を有識者たちは
秋とか!冬とかに分類されていますが
夏の詩ではないかと。

冬なら寒くて戸や窓が閉じられていても
夏なら開け放たれていて
月光が射し込むかも。

夏なら霜かと思っただけで
霜じゃなくて当然です。

たとえば「冬瓜(とうがん)」だって
夏の終わりの食べものなのに
「冬」の字がついています。
加熱すれば氷のようで
目に涼しいからじゃないでしょうか。
(異説は多いですけどね)

夏!月光を涼しく感じて
「霜」と詠(よ)んだのでは。



この詩は「不用意」なようにみせて
ホントは
深い心象風景ではないでしょうか。

李白は詩にやたら「月」の字を使います。
なにかを暗示しているのかも。

この詩には「月」がふたつもあります。
「不用意」でも短い詩に
大詩人がおなじ字を重ねる愚形?!

やはり「頭」もふたつありますが
その重複とは違うような。
やっぱり!なにか深い意味があるのでは。

この有名な詩を
文人墨客から学生・生徒まで
古今!多くの人が訳していますが
五言絶句で韻を踏んでいる詩を
説明的な散文に訳していいものやら。

五言絶句で視覚的に形が整っているので
せめて散文ではなく定型の詩にして
脚韻に対しては
日本のモーラ(拍)で訳してもらいたいもの。

井伏鱒二は小唄調に試みたそうですが
それも理にかなった一見識でしょう。



では恥ずかしながら習作を。
モーラを新しく(?)考案して
3 モーラ 3 音節
5 ブロック 4 行で
五言絶句のような形にして!やっつけます。

李白は「不用意」ではなく
月も霜も
酔っ払って浮かんだ心象を表現したと
勝手におもんばかって。


夢の 果ての 白い 月の 光

霜が 降りた ような 凝(こ)りた 心

拗(す)ねて 生きた まわり 道の 月日

母よ 青い 山よ 子もり 唄よ


原詩から遠く離れてしまいました。



寒いですね。
不用意に冬を迎えてしまいました。



(武部利男著/「静夜思」について/)
(一海和義著/漢詩一日一首/)
(駒田信二著/漢詩百選 人生の哀歓/)参照
(敬称略)
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