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しつけ糸 [はなしのはなし 食えぬ梨]

こどもはすぐ大きくなります。
先月大きめだった服が
もうきゅうくつになったりします。

いっときのことだから
おに~ちゃんやおね~ちゃんの
お下がりを着せておけ!なんてね。
われわれ貧乏人はそれがフツーでした。

兄がいる家ならいいけど
姉ばかりの家の弟は
姉の赤やらピンクの古着を
着せられたりしていましたな。

ふたつみっつなら構わんだろうと
おね~ちゃんの
花模様のスカートをはかされたり。

それが結構気に入っていたとみえて
40 歳の不惑を越えた今も忘れられず
昼は謹厳実直に勤めているおじさんなのに
夜になったら怪しげなクラブで
花柄のスカートをはいている
女装趣味の男を
ふたりばかり知っていますけどね。

ま!それはともかく
洋服が普及していなかった時代には
たいてい!大きめのものを入手して
肩上げとか腰上げとか
身上げをして着せていたものです。

身上げ糸をはずすときに
こどもの成長をしみじみ感じたものでしょう。

厳密にいえば違うかも知れませんが
身上げ糸をしつけ糸とも呼んでいましたな。

また!
新品の洋服・和服の形を保持するために
納品時にあちこちを仮止めしているのも
しつけ糸といいますね。



「おや!黒鷺(くろさぎ)屋さん。

あ!渋柿(しぶがき)屋の大旦那」
ちょうど今」
ご連絡しようと思っていたところでした」
お店(たな)にうかがっては」
ちょっとまずいなと考えておりました」

今!山出しのほやほやがやってきましたよ」
大旦那のご要望の生娘に間違いありません」

「どれどれ!見せてもらいましょう。

では!さっそくお寄りください」

黒鷺屋というのは口入れ屋。
今の職業紹介というか
人材派遣といえばいいのか!そんな
求人求職の仲立ちをなりわいにしております。

渋柿屋の大旦那は
50 歳になって娘夫婦に家業をゆずって
隠居の身になったのですが枯れてはいません。

「わたしはね!生娘がほしいのじゃよ。
「この年になっても 1 度もあたらない。

奥さまは!?」

「わたしは先代に見込まれて!はたちのとき
「手代の身から婿に入ったのじゃが
「そのとき家内はひと回り上の 32 歳
「2 度も婿養子に逃げられた女だった。
「生娘どころか!
「ずたずたのぼろぞうきんのようじゃった。

その後!あなたさまのごお力で」
あれだけのお店(たな)にしたのですから」
女なんてどうにでもなられたのでは」

「家内がうるさい!やかましい!
「家つき娘特有の根性が悪いだけの女。
「あ!顔も悪いぞ!鬼瓦のモデルになれるぞ。
「いまだにわたしを手代扱いしておる。

それは大変でございますね」

「もう生娘ならなんでもいいから
「頼みますぞ。



2 階のつきあたりの部屋に寝かせております」

昨日朝から村を出て」
ひと晩寝ないでふた山越えて着いたとか」
朝ぶろに入れて!休ませております」

仕事はなんでもいいといっておりました」
嫁入りでも後妻でもお妾奉公でも」
お女中でも子守りでも穴掘りでも」

やさしく声をかけてみてください」

「では。

暗いですから」
驚かさないように!そっとお入りください」

うぎゅぎゅぎゅ、、、、、、、!
げげげげ、、、、、、、!
ひぃ~!はぁ~!ぎょえ~!

「おい!黒鷺屋~!

よかったですか!さっそくお楽しみで、、、」

「あれが生娘かぁ!?

はぁ!赤いほっぺのぽちゃぽちゃした、、、」

「いきなりすり寄せてきた頬は
「しわしわ!ギスギスだったぞ!

はて?!」

「舌を射し込んでくるは!
「すぐ股間に手を入れるは!
「自分ですっぽんぽんになり!
「上になり下になり
「わたしが 1 度もイカないうちに
「3 度もイキよったぞ!

なにかの間違いでは、、、」

「毎度ありがとうございます!大旦那。

おい!おまえ!あのこは?!」

「ああ!近江屋さんが
「お勝手の子を探しに見えられて
「あのこを気に入って
「連れて帰られました。

そんなら!だれじゃ 2 階の女は!?」

「あんたのお母さんが
「いつ古希(70 歳)の祝いをしてくれるんやと
「ぶつぶついってこられたのですよ。
「たまたまふとんを敷いたままだったので
「しばらく休むといってらっしゃいましたが。



「越後屋さんは生娘かどうか
「どう判断なさいますかね。

渋柿屋さん!わたしなら!へのこを見せて」
その応対を観察してみたいですなぁ」
な~んだというような顔をしたら」
生娘じゃないでしょうよ」

「なるほど 1 日だけ臨時雇いにして
「試してみればいいのですな。

「さぁ!これがなにか分かるか?

へのこに決まってますがな」

「お帰り。

「これをなんという?
「見たことがあるか?

へのこでございますだ」
まだ!たった 100 本しか見たことがねぇです」

「はい!さようなら。

「なかなか見つからないのぉ。

「これはな~んだ?

はて!面妖なもの?存じません」

「おおお!知らぬとな!
「やっとあたったぞ!生娘に。
「これはへのこだ!こわくはないぞ。

そうでしたか」
へのこはもっとずっと大きいような」
そんな小さなものでもへのこですかぁ」



なんだ!ヨリ子!また帰ってきたのか」

「あんなに
「ばばぁにいいなりになる夫はごめんだわ。

少しは辛抱しろ」

「どこかに住み込みに行こうかな。

うちは口入れ屋だから!なんでもあるぞ」

「楽できれいなところがいい。

楽できれいな仕事なら」
お妾奉公くらいしかないだろう」

「それ!行く。

また!そんなわがままばかりいう」

「あんた!それいいかも。
「渋柿屋の大旦那にどうかな。
「大旦那はうちに娘がいることは知らないし。

大旦那は生娘を探せといっているんだぞ」

「このこ!童顔じゃない!
「背丈も胸もないし。
「年より 10 歳は若く見える。
「わが娘ながら!可愛いじゃない。

肝心の生娘じゃないじゃないか」
もう 2 回も嫁ぎ先をしくじっているんだぞ」

「わたしがあそこを小さく縫ってあげる。
「分かりゃしないわよ。
「男のへのこは鈍感だから。



大旦那!間違いなく!生娘でございます」

「あんたのいうことは信用できないがな。
「ほほ~!なかなか可愛いじゃないか。

少々値が張りますが」

「生娘ならおカネは惜しみませんよ。



いかがでしたか」
幼気(いたいけ)でしょう?」

「幼気じゃ。

おぼこい(うぶ)でしょう?」

「おぼこい。
「まだ!こどもだのぉ。
「しつけ糸がついていた。
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