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オットセイ [はなしのはなし 食えぬ梨]

「ご隠居!朝からニャンコとひなたぼっこ!
「のんびりですね。

『そうでもないぞ。
『うちのタマは腹が減ると
『めし!くれ!と
『わしの足や手にかみつくんじゃ。
『股間に爪をたてたりする
『食い意地の張ったやつじゃ。

『この前まで 7 軒向こうの
『ごんじいのところで
『缶詰の肉をもらっとったのじゃが。

「どうして!そんなところで。

『タマをノラ猫と思っておったようじゃ。
『み~ちゃんと勝手に名づけて
『缶詰を食べさせておったのじゃが。
『トラちゃんがな。

「うちの息子!なにかしましたか。

『トラちゃんがな
『この猫!タマですよ!と
『バラしてしまったんじゃ。

『ごんじいとわし!仲が悪い。
『あいつのとこの猫なんか知るもんか!
『となって!ああ!可哀そう!
『タマは肉がもらえなくなったんじゃ。

「ご隠居さんのニャンコでしょ。
「ご隠居さんがやってくださいよ。

『おまえんとこのトラちゃんのせいじゃ。
『缶詰代!少しおいて行け。

「やめてください!やつあたりは。

「そうそう!日曜日に
「トラ公と動物園に行ってきました。

『エエ心がけじゃ。
『ライオンがさかっておるとこなんか
『性教育にもってこいじゃ。

「そんなつもりではないのですがね。

『アヒルなんか!
『日になん十回もしておったじゃろ。

「していません!

『なんじゃ!面白くもないの。

「オットセイがいました。

『そうそう!オットセイじゃ!
『あれはすごいぞ!
『ハーレムの王さまじゃ。
『メスを 100 頭以上も
『従えているつわものもおるぞ。
『おまえのように
『いちどきにまとめてナニをしたら
『ちん×!すり切れて焼けてただれるぞ。

「そんなにしていません。
「え!?それで漢字で書けば夫性!?
「夫婦のオットに!
「セックスの性でしょうか。

『そりゃ!分からん。
『よし!
『昔の教え子の種津(たねつ)に聞こう!

「ご隠居!教師をしてたんですか。

『しとらん!
『中学生を集めて野山で遊んでおったのじゃ。

『そのとき!医心方(いしんほう)を
『講義したりしておったのじゃ。

「医心方とはなんです?

『平安時代に宮中で用いられた
『医学書じゃな。
『そのうちの巻二十八 房内篇を
『中学生たちと勉強しておった。

「なにが書いてあるんです?

『近世の四十八手!裏表の原形がある。
『セックスの体位が詳しく書かれておる。
『ガキどもは喜んでおったぞ。

『そのとき!一番の勉強熱心だった
『種津が今!
『女子高校でブラ検の鬼と呼ばれておる。

「なんすか!ブラ検とは。

『ブラジャーの検査主任じゃ。

「そんな先生がいるんですか。

『規定は白色と決まっておるんじゃが
『模様つきのやら
『まさし命とか男の名を書いたのやら
『援助交際で買ってもらった高級品を
『没収する検査係が種津じゃ。

『違反した女生徒の乳首を
『蝶々結びにしておるそうじゃ。

「どんな罰ですか?!

『種津家真良(たねつ けまら)
『名は体を表す!あいつに聞こう。

『あいつは大学で
『ダンゴムシの生殖の体位!
『四十八手を解明して
『セックスフォード大学から
『博士号をもらったといっておった。

「どこにあるんです!その大学。

『ま!わしとの基礎研究があったからじゃの。
『わしを尊敬しておるに違いない。
『ま!ともかく
『動物学やそのセックスの専門家のはず。



『たねつけ!まら!

〈リーダー!
〈変なとこで区切って呼ばないでください。

『オットセイの語源を知っておるか?

〈さぁ!?
〈だいたい!海獣!つまり海の哺乳類は
〈北の冷水域に棲息していますから
〈アイヌ語が多いようなんですが。

『アイヌ語かぁ。

〈トドとかアザラシとかラッコとか。

〈セイウチは違うようですがね。

「セイウチはなに語なんだろう。

〈オランダ語という説がありますが。
〈オランダ語のゼーコエからじゃないかと。

『ええ声しておるものはエーコエ!
『セイウチは
『ゼーゼー声しておるからゼーコエ!

「ご隠居!
「セイウチの声!知っているんですか。

『聞いたこと!ない。

〈オットセイは
〈中国語の漢字からじゃないんですか。

『中国語かぁ。
『漢語なら
『籾樅山(もみもみざん)
『和戯寺(あえぎじ)のエロ坊主に聞こう。



『あのエロ坊主!
『子宝祈禱(こだからきとう)で
『しこたま儲けておる。

『おまえんとこもしてもらって
『トラちゃんを妊娠したじゃないか。

「そうでしたね。

『せんにゅう観音像の前で祈祷しておる。

「なんですか!せんにゅうとは。

『千の乳!千のおっぱいがある観音像じゃ

「そんな仏さまいらっしゃるのですか。

『秘仏じゃ!
『そこへ女性をすっぽんぽんで寝かせてな。
『お大師さん考案の
『千年の!秘密の!奥義(おうぎ)ゆえに
『人払いして祈祷しておるわい。

「どこの!なんというお大師さんですか。

『知らんけどな。
『そのとき!坊主もすっぽんぽんじゃ。

「神事!仏事でしょうかねぇ。

『トラちゃん!眉に目にあごの線!
『エロ坊主にそっくりやな。
『ああ!霊験あらたか。

「ご隠居!やめてください。
「まるでお寺の子みたいじゃないですか。

『みたいじゃなくて!
『お寺のエロ坊主の子じゃ!どう見ても。
『でもな DNA はそうでも
『戸籍上はおまえの子じゃ!安心せい。



『和尚!オットセイについて教えておくれ。

《なかなかよく効きますぞ。あれは。がはは。

『なんじゃ!?

《精力剤ですな!
《オットセイのペニスやきん×まは。

《漢字では 3 字で表します。
《最初の字は
《温度の温の
《さんずいのところが月偏ですな。
《おなじく月偏に
《内外の内の字を組み合わせた字。
《もうひとつ!へそという字ですな。

「へ~!そ~!

《オットとはホントは
《オットセイの肉のことでしょう。

《月偏といいましたが
《ホントはにくづき!すなわち肉ですわな。
《食べたら体がぬくもるから
《にくづきに温度の温の片割れ。
《内臓も食べたのでしょうから
《にくづきに内蔵の内の字。

『しかし!へそはなんじゃ。

《日本には精力剤!
《すなわち!あの部分だけが
《薬として入ってきたから
《食用肉の意味は忘れられてしまったのでは。

《その薬は陰茎と睾丸とへそを
《いっしょにつながらせて切り取った部位を
《乾燥したものだったと考えられます。

『う~ん!?分かったようで!分からん。



〈あ!今思い出しました。

『なんだ!たねつけ。

〈種津です!ホントにもう。
〈昔の教え子が
〈天国動物園に勤めていますが。

『おまえ!その娘(こ)に手を出したな。

〈はい。

『エエことしやがって。
『なにかヒントがあるかも!会ってみよう。
『案内しなさい。

〈いや!ぼくは!ちょっと。

『なにを遠慮しておる。
『わしらだけで行こう。

⦅ああ!種津センセ!はは。

『ごめんよ!過去を思い出させて。

⦅大丈夫です。
⦅あんなとんがらし!
⦅なんとも思ってないです。

『あいつ!鷹の爪の唐辛子ほどの
『租チンだったのか。
『それがバレた娘(こ)に会うのは
『恥ずかしいのか。

⦅わたし!飼育していると
⦅気づいたたんです!オットセイの語源。

⦅岩場の上で大勢のメス!
⦅すなわち奥さんたちが見ていて
⦅すきをねらっている離れオスたちが
⦅遠く近くで見ている前では
⦅ぶざまな格好は見せられません。

⦅岩の上は高くて飛び込むのは怖い!
⦅でも!多くのメスが声を合わせて
⦅夫にオット!と
⦅元気づけるように叫べば
⦅覚悟を決めて
⦅セーノー!と
⦅声張りあげてダイビングしたのでは。

⦅それで!オット!セーノー!どぼ~ん!
⦅オットセーノー!
⦅オットセイ!
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