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黒部の太陽にイワナを思う [活動写真]

映画が始まってすぐ!キャストの文字が流れます。

なんと!?
役名はなく役者は全員五十音順!
ギャラの額にも役の軽重にもかかわらず!あいうえお順。

石原裕次郎も三船敏郎も
多くの出演者の中に埋没しています。

「黒部の太陽」です。
関西電力の(黒部川第四発電所用の)黒部ダムの建設時の
トンネル工事の困難を極めたはなしです。
私の周囲では黒部ダムを黒四ダムと呼んでいますけどね。

三船プロダクションと
石原プロモーション共同制作とはいえ
スタッフ・キャストは
劇団民藝(宇野重吉主宰)の段取りが多いので
寄せ集めの苦心が表れているのでしょうか。

でも!映画の版権は石原プロが持っているんですね。

1968 年公開の映画ですが
長年!石原裕次郎の遺言を守って
再上映もほとんどなく!ビデオ・DVD化もなく
原則!非公開だったのに近年急変しました。

石原プロの取締役の
渡哲也や館ひろしらが徒党を組んで辞任した後
残った裕次郎未亡人の北原三枝が
急に方向転換したようですね。

そこで私にも初めて観ることができるチャンスがきて
映画館に赴いた訳です。



映画は自然破壊を糊塗するように
トンネルの難工事ばかりを強調しています。

関西電力が全面協力したといいます。
特に大量のチケットを引き受けたといううわさ。

会社側の意図が見え隠れしていると感じるのは
私の根性がねじ曲がっているからでしょうか。

国立公園を切り刻んだ犯罪(?)を正当化したい?!



とはいえ!このダムはなん度見ても心が震えます。
私でも感動することがあるのですね。

ところが
今!数時間も
写真やネガの段ボール箱を
ふたつもひっくり返していたのですが
写真が出てこないのです。
過去!撮影をしたり!
されたりしていなかったのでしょうか。

怪しげな団体の幹事をさせられて行ったことも。

雷光が足元を払い
雷鳴が耳元で爆発する中を
山中からころがり落ちるようにたどり着いたことも。

立山で 1 泊して
大酒盛りしてから下ったこともあったような。

カップルで浮き浮きと
立山黒部アルペンルートを越えたこともあったような。
ま!それは記録に残せませんね。後でヤバそう。はは。

昔!黒四ダムに着いたら殊勝に手を合わせていた
「尊きみはしらに捧ぐ」像のネガだけはありましたが。
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黒部川には
50cm 級のイワナ(岩魚)がうようよいた!なんて
まことしやかにいう人が多くいましたが。

いたのかも知れません。

今は!どうでしょう。
少なくても黒四ダムからの下流にはいないでしょう。
いくつものダムが水を止めてしまっています。

私がトロッコ(黒部峡谷鉄道)で
温泉を探しているときには
いつも渇水期だったのか!
水なんてありませんでした。

その当時の鐘釣温泉。
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温泉といっても黒部川の川底ですが。
歩いて向こう岸まで行けますよ。
完全に自然破壊(?)ですよね。

鐘釣温泉の下流に黒薙温泉!宇奈月温泉!
上流に名剣温泉!祖母谷(ばばだに)温泉!

欅平(けやきだいら)駅の近くにも
温泉はあったかも知れませんが
そこには入浴したことがありません。

余談ですが
名剣温泉の露天風呂の中の私の裸体(シルエット)が
ある旅のガイドブックにのっていたのを
後日!書店で発見して腰が抜けたことがあります。



黒部川に「職漁」がいたのだそうですよ。
釣りを職業としていた人。

鬼窪善一郎述/黒部の山人/によると
戦後(1945 ~)述者は山中になん日もこもって
イワナを焼いています。
相棒が 1 日に 150 ~ 200 尾釣り
述者がそれを燻製にしていたようです。

現在の黒四ダムから上流のあたりで。

焼いておいしいのは 22、3cm
刺し身には 30cm までだそうですから
そのくらいのものがいくつも釣れたのでしょう。



時代がさがって 1967 年ごろでも
亀井巌夫著/釣の風土記では
黒部川の支流の黒薙川で
尺(30cm)イワナが次々に釣れたとあります。

さらにさがって 1979 年ごろ
黒四ダムの真下でイワナを釣った人がいます。

高木國保著/我が山釣りと山菜への誘い/には
小さなものしか釣れないとぼやいています。

それもそのはず!
黒四ダムは観光客用に放流し
夜は流さず!
そのとき黒部川は死の渓と化していたそうな。



鐘釣温泉旅館の夕食で
こんがり焼いたイワナに
熱燗(あつかん)をかけて飲んだら
おいしかった記憶がよみがえりました。

それでくどくどと
イワナの小さな知識を連想していたのです。

スクリーンの中で
辰巳柳太郎が終始もだえて!あばれています。
大活躍ですね。
まるで新国劇の舞台のようです。

またまた!はなしが澪(みお)外に出ますが
池波正太郎著/食卓の情景/によると
新国劇の経営がおかしくなったころ
すでに還暦を越えた辰巳の肉体が若返り(?)
仕出し役まで買って出たそうな。
そのころの出演でしょうか。

ストーリィには
注視するほどのものを感じなかったので
不謹慎にも辰巳の活劇に
滅び行くイワナのもだえを重ねていました。



もう黒部川に行くこともないでしょうけど
行くのなら鐘釣温泉に泊まって
翌日は祖母谷温泉に浸かっていたい。

祖母谷温泉は川岸の露天風呂。
今ごろ!ススキの穂に囲まれていることでしょう。
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ちなみにこのあたりみな混浴だったような。
もう!恥ずかしくて!入れないかな。



(敬称略)
タグ:池波正太郎
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