晩秋 祖谷渓(いやだに) [うそ八百]
赤く 染まる 胸の 奥の しこり
それも すぐに 褪(あ)せて 秋が 過ぎる
空が 落ちた ように 祖谷(いや)は 深い
こだま 呼べば 青い 風が 死んだ
過去を 背負う 人は 夢に 疲れ
過去を 捨てた ふたり 人も やめよ
「あなた 生きて あたし ここで 眠る」
「あなた 生きて ぼくの 歌を あげる」
女 だから うそに 酔って 一期(いちご)
男 だから うそを 信じ 一期
落ち葉 踏めば 骨(こつ)が 折れる 音が
親の 骨が きしみ さとす 音か
もがり 笛に 和した 日々は はるか
前世 来世 業(ごう)も 愛も いらぬ
空が 落ちた ように 祖谷は 燃える
抱いて 抱かれ 体 だけの まこと