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海神の漁汁 [西田辺探検記]

先日!伊勢で伊勢えびを食べられなかったですね。
怖いお局さまの鶴のひと声で。

あの「おかげ横丁」に
エビの入っていた味噌汁がありました。
てこね寿司の「海老丸」にあったと思うのですが。

1200 円くらいだったような。
じゃ!伊勢えびではなく
他のエビか!カニ(蟹)だったのでしょうか。

味噌汁の名前は「漁師汁」でした!たしか。



「漁師汁」といえば
韓勝源(はんすんうぉん)の「海神」に
出てきたような。

だいたい「海神」を「うみがみ」と読むのか
「わだつみ」なのか「かいじん」なのか
それさえ知らないものが論じてもこっけいですが
幻想的な妖しいはなしでしたね。

(旧暦の)正月 14 日に海神祭があるのです。
ソンマンの妻はその 1 月も前から
挙動が怪しく!妖しく!なっていき
夫も近づけず
潔斎(けっさい)は厳格にして
祭事に臨もうとしています。

そして 46 歳の髪が!肌が!唇が
妙に若やいでうるおいを増してくるのです。



妻の秘密が分からないまま海神祭の夜。

  祭礼のすませた膳を差し出した。
  あえものの匂いが
  妻の乳房や体の匂いのように
  かれの心を熱くした。

ここでかれは「漁汁」の実をつつこうとします。

「漁師汁」ではなく「漁汁」でしたね。

「漁汁」?!
またまた!これなんと読むのですかね。
「いさりじる」でしょうか。
この日本語訳は「韓国文芸編集部」ですが
ルビを打っておいてくださいよ。

注意書きに「貝類を入れたスープ」とあります。



地下鉄西田辺駅の近くの自称・高級割烹で
しばし沈思黙考。

とりあえず!
そこのアサリで味噌汁を作ってもらいましょうか。

「うちのアサリ!高級品!」
「400 円やけど!いいの?」

人を貧乏人のようにいってから!
たしかに貧乏人ですけどね!
貧乏人にはいわれたくないの。

どこにアサリがあるのよ。
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「サービスで汁を増やしてやったのに」

あなたは北大路魯山人か!?

  貝類は多く使うと味をわるくする。
  あくどい料理になってしまう。
  (魯山人の料理王国)

私はあくどい料理でもいいから
貝は多い方が好きじゃぁ!

汁はいらん!上までアサリを入れなさい。
blog2.jpg
上をだいぶ飲んだら底にありましたが。

重ねていいますが!実の多い方が好きですけどね。



小説の「海神」は 1977 年の発表。

先の大戦の前後の不安定!
その後の動乱!荒廃!
他民族には分からない多くの悲しみを
まだ!背負っていたころのはなし。

そしてこの時代は「処女」へのこだわり!
他の作家の小説も含めて
今では異常とも思われる表現が
おそらく意識なく書かれていますね。

呉善花(おそんふあ)著/スカートの風/に
韓国軍の入隊テストが書かれています。

著者は女性です。

入隊資格に「処女」があったそうな。
かの女が処女審査を受けて入隊したころと
「海神」の時代は重なっているのかも。



ソンマンの妻は処女ではありませんでした。

韓国動乱・女性同盟!麗水・順天反乱!収復!
私には単語さえ聞いたことのない歴史の荒波。
その生死の境界線上で
かの女は多くの男性と肌を合わせているのです。
それは流れの中!仕方ないことでしょうけど。

ソンマンはかの女が浮気していると疑います。

ま!浮気といえば
浮気をしていたのですけどね。

暗い洞窟で!
一糸まとわぬ姿で!

「海神」と!?

動乱時!銃殺された恋人は
この海に散骨されていたのです。

虚空を抱いて
ひとりもだえる熟(う)れた女。

「エアセックス」と思わず命名してしまった
不謹慎な私です!怒らないでね。



ふと!思い出しますね。
日本では
泉鏡花の高野聖(こうやひじり)の
深山の渓谷で一糸まとわず立つ
練り絹のような女性!

どちらも映像化したいものですね。



ああ!
なにかけだるくなったから帰ります。
アサリ汁代!つけておいて。

「おい!お~い!困るんやけどぉ!」

コートの襟を立てれば聞こえないよ。
たぶん!明日持ってくるから信用しろ。

外は寒い。

ん!?
旧暦 1 月 14 日の海神祭の日といえば
今ごろじゃないですか。

洞窟の中の一糸まとわぬかの女?!
全羅南道の漁村らしいけど。
韓国の南西部とはいえ!寒いでしょう。

小説だからでしょうか。
かの女のほとばしる恋情が
寒さを吹き飛ばしているのでしょうか。



(敬称略)
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