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井手の玉川にて [野道!山道!恋はけもの道!]

TVにですね。
あ!TV!珍しいのです!私には。
デジアナ変換サービスが終了したので
ブラウン管受像機には放送がなんにも
映らないんですよね。(拙ブログ 2015/03/12

それで
深夜よそのTVを見るともなしに見たら
ナンノ(南野陽子)が出ていた古典芸能の番組で
全国の「玉川」が紹介されていました。

その中のひとつ
ヤマブキの玉川。
偶然!歩いたばかりだったので驚きました。
よく考えると驚くほどのこともないのですが。



それは京都府井手町の玉川。
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木津川の支流でしょうか。
やさしい流れです。
川沿いに遊歩道みたいな道がつづきます。
桜(たぶんソメイヨシノ)が
途切れず植えられています。

もう桜若葉の季節ですが。

川辺なる 所はさらに 多かるを
  井手にしも咲く 山吹の花

和泉式部が詠っています。
昔は桜ではなく
ヤマブキの名所だったようです。
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ヤマブキも盛りが過ぎています。

蛙(かはず)なく 井手の山吹 ちりにけり
  花のさかりに あはましものを

橘清友の歌もあります。
ヤマブキの後は
かわず(カジカガエルかな)の
名所でもあったのですね。



大昔から
この井手の玉川にヤマブキの花を観賞に
さらにカジカの声を愛(め)でに
大勢の人がやってきていたようです。

平安京に 5 里
平城京に 5 里といわれる中間の
「ごりごりの里」から(拙ブログ 2009/03/05
ほんの少し奈良よりの里。

貴族や文人墨客が
「アウトドア」にいいロケーションだったのかも。



桜の樹に短冊に見立てた樹脂のプレートを
これでもかというほどたくさん下げています。
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幼い句や歌ですね。
あ!
いいとか悪いとか評価ではありませんよ。
作者は年齢不詳!近隣の方でしょうけど
句や短歌を始めて作ったかのような作品ばかり。

だれでも詩人になれる国なんです!日本は。
1 億総詩人の国です。

張競著/和歌の詩歌様式を読み直す/にも
日本ほどだれでも詩人や歌人や俳人になれる国は
他に見られないとあります。

著者は上海生まれの中国の方ですが。

詩歌の形式は
新陳代謝が激しいのだそうです!世界的に。

詩の形式は全盛期を迎えたら!すたれ
次に新しい形式が生まれて!すたれ!
その繰り返しだそうな。

日本では
千年も五七調!七五調の詩の形式が不変なんです。

万葉集の返歌と
現在の短歌とまったく同じ形式じゃないでしょうか。

あ!
返歌といっても返事に書いた歌ではなく
長歌の後にその詩の要約なんかをした歌ですが。



その点!日本語は便利といえば便利です。
5 7 5 と文字を並べたら詩(句)ができるのです。

少ない例外をのぞけば
文字のすべてに母音がついている
世界でも稀有な言語です。

たとえば「デスク」は
「デ」にも「ス」にも「ク」にも母音があります。
3 音と数えられますよね。
よいこはローマ字で書いてごらん。ねっ。

英語の「desk」は
ほとんど子音です。
句にするとき文字を数えられません。

小さな「ゃ」や「ゅ」とか「ょ」は無視して
「ん」と「っ」や長母音は 1 文字に数え
5 7 5 と並べたらとりあえず句になりますよ。
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その作品に
他人が感動するかどうかは別問題ですが
それは気にしなくてもいいのでは!はは。

「大巧(たいこう)は拙なるがごとし」

なんて老子はいいませんでしたか。

「初心者の悪い見本のような手と」
「プロの達人の差す手が似ている」

と!谷川浩司十七世永世名人(資格者)が
いっていたような。(拙ブログ 2014/07/28

名人上手でも後世に残る句や歌は
一生にひとつできるかどうか!と思いますよ。



万葉集にもこの里の歌があるような。

玉藻(たまも)刈る
 井堤(ゐで)のしがらみ 薄みかも
  恋の淀める 我が心かも (佐佐木信綱訓読)

この井堤が今の井手なら
相当昔から有名な川だったようです。
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万葉集といえば
斎藤茂吉が怒った随筆を書いていましたね。

兼常清佐とかいう権威者(?)が
現在(昭和 14 年)のほとんどの短歌は
万葉集のまねごとだ!
鑑賞に値しないとかなんとかといったらしい。

しかし!与謝野晶子の歌は好きらしい。
万葉集じゃないから?!

理屈が偏狭なような。
晶子の歌も
同じ形式から脱却していないじゃないの。

茂吉でなくても怒りますわね。



この近くに小野小町は住んでいて
その証拠に墓があるそうな。

色も香も なつかしきかな 蛙なく
  井手の渡りの  山吹の花

なんて詠っています。

ケチをつけるようですが
小野小町の墓は
全国に 10 か所以上あるようです。

柳田國男著/桃太郎の誕生/によると特に

「南無薬師の歌物語ばかりは」
「不思議に小野小町に托したものが」

全国に普及しているそうな。



橘清友のいうように
ヤマブキの花はすでに鑑賞の域を脱しています。

この地の特産品の孟宗竹の筍(たけのこ)畑が
色づいているような。
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竹の秋ですか。
もうすぐ夏ですね。
水遊びが楽しい季節。
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(敬称略)
タグ:柳田國男
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