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ピクニックは野あそび [活動写真]

「ピクニック」を観ました。
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1936 年のフランス映画だそうです。

監督はあの印象派の画家
ピエール オギュスト ルノワールの次男の
ジャン ルノワールです。

1936 年と発表されていますが
撮影は終了していたのに
完成前に大戦が始まり
ナチスがフィルムを捨ててしまったのだそうです。

それが!戦後!
オリジナルネガが奇跡的に見つかったのですね。
それで監督抜きで編集して
1946 年に公開されたものだそうです。



モノクロ映画です。

時代は日本の明治維新のころ。
パリで毎日ほこりにまみれて働いている一家が
牛乳屋の馬車を借りて遠出するはなしです。

セーヌ川でしょうか
川沿いの田舎のレストランの庭で
ランチをすることに。

30 代半ば
脂ののった!というより
のり切った!ころころの妻。

おとなの入り口の
スレンダーな 18 歳の美人の娘。

ふたりがブランコに興じます。

キャメラはこのふたりを官能的に撮りたいようです。



初夏の光がきらめきます。
水面がまぶしい。
葦(あし)が揺れます。

80 年前の撮影センスに感服します。

でも!この音楽と
たくさんの早口のせりふは
私にはうるさ過ぎます。

もっとのどかに進めてほしい。



父と使用人兼娘の婚約者は釣りをし
おばあさんはにゃんこと遊び
母と娘は土地の若ものとボートに乗ります。

母と娘は別々のボートです。

川面をボートがすべり
家族の見えない遠くの
岸に上がり
ふたりの女は
たくましい田舎の男に身をゆだねます。

パリに比べて静か過ぎるから。
ウグイスの鳴き声に感動して涙が出たから。

そんなことくらいで身をまかすなんて!
家族の男たちが知ったら
怒るよ!きっと。



これ!
モーパッサン(1850 ~ 1893)の短編に
似たようなストーリィがあったような。

ああ!そうですね。
原作はモーパッサンの「野あそび」となっています。

「ピクニック」を広辞苑で見ると
「野遊び。遠足。遊山。」とありました。

ピクニックは日本語として育ったので
訳語を知りませんでしたが。

私の企画するハイキングに集まってくる人たちは
ハイキングもピクニックも遠足も
混同して使っていますけどね。

なかには「キャンプ」なんていうご老体も。

私の先達は「吟行」をよく使っていましたが
「遊山(ゆさん)」なんていいですね。
なんか!優雅に思えませんか。



原作はさらりと筆を進めていますが
映画は田舎の人の狡猾(こうかつ)さや
セーヌ川やパリの汚濁を強調しているような。

ふたりの女は
田舎の男たちのワナに落ちてしまったのでしょう。

ワナだったと知らない方が幸せというもんでしょう。



(「野あそび」は青柳瑞穂訳を読みました)
(敬称略)
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