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生きている花嫁人形 [活動写真]

今日は情けない飼い猫のように
野性の牙が矯(た)められ
雨の日にはアウトドアをためらい
地下鉄を降りたら
映画館まで走るくらいが精いっぱい。

エルンスト・ルビッチ(1892 ~ 1947)監督の
「花嫁人形」を上映していました。

1919 年/サイレント/64 分/ということは
ルビッチがまだ
アメリカ・ハリウッドに乗り込む前の
ドイツ時代のメガホンかも。

でも字幕スーパーは英語ですけどね。

ビデオや DVD やネットで
鑑賞できるのかどうか知りませんが
ほぼ 100 年前の無声映画に
初めて接した私には新鮮でした。



喜劇です。
無声なのに!笑えます。

男爵の叔父の遺産を相続できることになった男。
条件がひとつあります。
「結婚すること」です。
でも!男はチョー女性嫌いなんです。

僧侶たちの知恵は
「女性そっくりの人形を用意して」
「結婚しています」と
叔父さんに見せればいいというもの。

この修道院のボーズたちは
豚の足をかじっていても
だれかがきたら!さっと隠してしまう
精進がわずかもない悪いやつらです。
財産を横取りしようとしています。

さっそく天才という人形職人に発注します。

人形は完成したのですが
職人の弟子が
引き渡す前にうっかり壊してしまって!
さぁ大変!

職人の娘はその弟子をかばい
壊れた製品の代わりに人形のふりをして
男の元に引き取られて行きます。

まぁ!人形ですかねぇ。
blog花嫁人形.jpg

ぷりんぷりんと
どう見ても生々しい女の子なんですがね。

だれも気づきません。

人形(?)はだれも見ていなかったら
ワインを盗み飲みします。
空腹になって男の食べものをつまみます。
気に入らないと男をたたいたりします。

いいんじゃないですか!楽しそう。

日本映画「空気人形」(拙ブログ 2009/11/25)では
生身の恋人がほしいのにつくれず
代わりに人形と暮らしていましたが。

大道具・小道具!背景!
演劇の舞台を見ているような映画でした。
100 年前の特撮は血が通っているじゃあないですか。
舞台より展開にスピードがあるので
1 時間充分スクリーンに引きつけられます。



「花嫁人形(詞・蕗谷虹児/曲・杉山はせを)」
という歌を思い出しました。


きんらんどんすの 帯しめながら
花嫁御寮(ごりょう)は なぜ泣くのだろ

文金島田に 髪結(ゆ)いながら
花嫁御寮は なぜ泣くのだろ

あねさんごっこの 花嫁人形は
赤い鹿(か)の子の 振袖(ふりそで)着てる

泣けば鹿の子の たもとがきれる
涙で鹿の子の 赤い紅にじむ

泣くに泣かれぬ 花嫁人形は
赤い鹿の子の 千代紙衣装


よく分かりません。
難解な詩ですね!浅学なものには。
なかなか意味深ですが
複雑なさだめがあって嫁ぐのか
泣くのは花嫁の個人的な思いだけなのか
怖いのか!うれしいのか!不安なのか!
これ!童謡の範疇(はんちゅう)なんですか!?

そもそも
人形が泣いているのですか。
泣いているように見えるのですか。
初めから泣いている人形が作られていたのですか。

初めの 4 行は花嫁御寮!つまり人間で
その後は人形なんですか。
泣けるのは人間で
人形は泣けないということですか。

少女や人の世の機微!
これは童謡じゃないのでは。



「花嫁御寮」の「御寮」はなんですか。

大阪にきて上方落語を聞いていたら
商家の主人の妻を
使用人や出入りの人が
「ごりょうさん」「ごりょんさん」と呼んでいて
なるほどと思いましたが。
遅い学習ですね。はは。

あんまり古い女性にはいっていないようなので
花嫁に「御寮」をつけるのは
納得できる日本語かも。

あれ!?
花嫁に年齢制限はありませんから
花嫁が若いとはかぎりません?ですかね。



「和御料に 心(こころ)筑紫弓(つくしゆみ)」
「引くに強(つよ)の心や」

16 世紀初頭に編集されたという
「閑吟集」にある小歌。

あなたに心を尽くしているのに
引いてもなびかない強い心ですね!
というような意味なんでしょうか。

「尽くし」と「筑紫」
弓ですから「引く」
それに筑紫弓は強い力がいるらしいです。
という歌の技法はさておいて
「和御料」は「わごりょう」または
「わごりょ」と読んで
「あなた」という意味の
二人称の親しみのある呼び方ですか。



「恨みは何(なに)はに多けれど」
「または和御料を悪(あ)しかれとさらに思はす」

冷たいあなたに恨みは多いのですが
あなたに不幸があれとは思いません!
というような意味の女性の小唄。

「何は」は「難波」
「悪し」は「芦(あし)」に
かかっているということなどの考察は後回しに
「和御料」だけを考えましょう。
この場合は「男」を指すのでしょうね。

前述の小歌の「和御料」は「女」のようですね。

男女どちらにも使えるのですね。
どちらにも使っていたのですか。

閑吟集には「和御料」がいっぱい出てきます。

強(し)いて引っかかるのは
「御寮」と「御料」は
同じものかということですが。はは。



花嫁御寮のはなしでしたね。
いや!
花嫁人形の映画鑑賞でした。

いいですね!この映画は。
気が滅入った雨の日でしたが愉快でした。
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