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万葉集の高円山 [南都有情]

平城京を見降ろす高円山(たかまどやま)は冬枯れ。

冬でも観光客がうごめいている奈良ですが
さすがにここまではやってきませんね。

いい雑木林なんですが
包帯(!)を巻いた痛々しい木が多い。
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広葉樹(主にカシやシイやナラ等)を枯らす
カシノナガキクイムシ対策ですか。

昔の里山みたいに更新したらいいのでは。

太い木は伐り倒して
炭やたきぎに利用したらいいのに。
木々は実生なり
ひこばえなり知恵を出してよみがえりますよ。
カシノナガキクイムシは
若い木に巣くうことはマレなはず。



万葉集には
高円山(高圓山)の歌がいっぱいあります。

たとえば大伴家持の恋歌。

高円(たかまと)の 野辺の容花(かほばな) 面影に
見えつつ妹(いも)は 忘れかねつも

容花のようなあなたが忘れられません!なんてね。

万葉仮名で見れば

高圓之 野邊乃容花 面影爾
所見乍妹者 忘不勝裳  (1630)

万葉時代から
高円(高圓)は高圓!同じなんですね。
もっとも!「たかまと」とにごらずに発音しろと
エラい先生たちはいっているようですが。

あ!容花?!
「かおばな」ってなんですか。
妹の面影ですから
きれいな花なんでしょうなぁ。

ヘクソカズラやコンニャクの花ではありますまい。
あ!ヘクソカズラが悪い訳じゃないですね。
見方によれば愛らしいかも。
鼻をつまむ匂いさえなければ。

閑話休題。
万葉集にある高円山の歌には
植物が多く詠みこまれています。

萩!桜!もみじ!なでしこ!
尾花!おみなえし!くず等々。



8 月 15 日に点火する
大文字送り火の火床があります。
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万葉時代にはなかった火床。
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昭和 35 年(1960)から始まった行事のようです。




万葉集の初めの方には
花やら恋やら平和な高円山の歌ばかりでしたが
20 巻あたりのなると
なにやらきなくさくなってきます。

高円の 野の上(うへ)の宮は 荒れにけり
立たしし君の 御代遠(とほ)そけば

大伴家持は
高円山の宮は荒れてしまった!といっています。

白文は

多加麻刀能 努乃宇倍能美也波 安禮爾家里
多多志志伎美能 美與等保曽氣婆  (4506)

ん?!
「高円」がこのあたりでは
「多加麻刀」という表記。
同じ山ですよね!間違いないでしょうねぇ。
ああ!「多加麻刀(たかまと)」だから
「高円」も「たかまと」と
にごらず読めということですか。

ともかく
聖武天皇か志貴皇子かそれとも違う人のか
別荘が荒れ果てる時代がきたようです。



大文字の火床を越えると尾根道。
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上りは急峻な小径なんですが
ここまでくると古(いにしえ)の歌人たちも
爽快な思いだったことでしょう。
晴れていたらね。

突然!石段が!
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長い階段。
上ったところが 432m の頂上。
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それだけですが。
見晴らしは悪い。

なにか祀(まつ)ってあるのかと思いましたが。
二等三角点の石標があるだけなのに
石段を積んだのですか。

大宮人(おおみやびと)の
喜怒哀楽が漂っているところかも知れません。



(佐佐木信綱編/白文万葉集および)
(佐佐木信綱編/新訓万葉集を読みました)
(敬称略)
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