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花を折る人 桃ケ池の桜 [解語の枯れ尾花]

わが家の庭(?)の桃ケ池にも
花桃が少し残っていたところに
桜(ソメイヨシノ)が咲きました。
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満開のころに天候不順ですが
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16 世紀の閑吟集に

人の姿は花靭(はなうつぼ)優(やさ)し
差して負うたりゃ うその皮靭(かわうつぼ)

という小歌がありましたが。

靭(うつぼ)とは矢を入れて背負うものですね。

(たぶん)桜の花の枝を折って
靭に入れている(たぶん恋しい)人はすてき。
でも実際には
嘘(うそ)つきの誠意のない人ですよ。
なんてすねているようですが。

ふと!

紅葉狩り 春には桜を 折った群れ

なんて川柳を思い出しましたが。
今日のランチのメニューも忘却の灰色の脳には
どなたの作やら記憶にありませんが。

桜狩りとか紅葉狩りとかはホントーに
ポキポキ枝を折っていたのでしょうか。
今はあんまりそういう輩を目撃しませんけどね。

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「桜狩り」といえば
13 世紀ごろの短編物語集の
「堤中納言物語」に
「花桜折る中将」というはなしがありましたね。

「堤中納言物語」は
「虫愛づる姫君」だけ印象にありますが。
他は小津安二郎監督の映画作品のように
(あくまでも私の阿呆な感想ですよ)
なんにも面白いはなしはありませんが。

それはともかく
まず題名の「花桜」が引っかかりますね。
桜の花のことでしょうか。
今では桜の花は「桜花」とかきますけどね。

桜の種類か咲き方のなにかでしょうか。

その「花桜」を「折る」のですか。

ぬけぬけと 転(こけ)そに花を 売る芸子

なんて雑俳が
文政(1818 ?)のころの「水加減」にありますが。

芸妓をはべらす対価のことを
「花代」というようですから
「花」とは美しい人(たぶん女性)でしょうか。

その「花」を「折る」とは
おだやかなはなしじゃないですね。

物語もおだやかではありません。
よそのお姫さまを盗んで逃げるはなしですが。

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あ!?
たわむれに「広辞苑」なんかを広げてみたら
「花」に「美人」とか
「女性」とかの意味は見あたりませんが。

「花を折る」はあります。
「容姿が美しい」ことだそうな。

浅学なもの(淫乱な考えのものでもありますが)は
迷路に入ります。

平安時代の男性の執筆した文学の傑作といわれる
「大鏡」の「太政大臣伊尹(これまさ)」の項の
「花を折りたまひしきんだちの」は
保坂弘司訳では
「はなやかに振舞っておられたご兄弟」と
なっていますね。

やっぱり。
直接的に「花を折る」ことはないですね。

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「花」を「折る」とは
女性にいけない行為を
することではないと分かったのですが
「花桜折る中将」はお姫さまを盗んで逃げます。

あるく足 持っていながら かたげられ

延享(1744)のころの「旅すゞり」にある雑俳。
「かたぐ」とは「かつぐ」こと。

どうも!盗むほうと
盗まれるほうは承知の上らしいですね。

嫁盗みに行って背負うて逃げていると
嫁側の人が追いかけてきて
「違います!違います!」
盗むはずの女性の妹を盗んでいたらしい。
すると盗まれている妹が
「違いません!違いません!」というはなしが
明(1368 ~ 1644)の「笑府」にありますが。

妹は盗まれたがっています?!
盗まれるほうが栄誉なんですかねぇ。

どなたか解説してくだされ。

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「花桜折る中将」も間違えて
お姫さまの祖母を盗んで逃げました。

その後どうなったのでしょうか。
なにも書かれてはいませんが。

おばあさまも
「違いません!違いません!」といえば
面白いような。



(新訂 閑吟集/浅野建二校注/)
(堤中納言物語/山岸徳平訳注/)
(大鏡/保坂弘司訳/)
(歴代笑話選/松枝茂夫編訳/を参照しました)
(敬称略)
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