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一心寺 楊貴妃の野ざらし [通天閣が見える]

夏がきましたか。
ジャカランダの花が咲いています。
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一心寺(大阪市天王寺区)の墓地の空。

今年は例年より(拙ブログ 2015/06/25
花数が少ないような。
気のせいかも。
これから咲くのかも。

境内はなにやらいつもと違う雰囲気。

仏教の知識がないので
いい加減なことをいいますが
他の寺では盆の期間だけの
施餓鬼(せがき)法要を
ここでは年中無休で行っているとか
だれからでも納骨を受けているからとかで
いつも境内には善男善女がいるのですが
仮の雨よけの上屋を造っていたり
境内整理・案内の人が多くいたりして
さらに忙し(失礼!)そう。
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新しいお骨仏(こつぶつ)が
開眼したのですね。

10 年に 1 体
その間に納められた遺骨で
阿弥陀仏を作っているのです。

この 10 年に遺骨は 22 万体だったそうな。
たぶん!私の知人もなん人かいます。



この寺に墓地がない訳でもないのですが。
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大阪市の背骨の上町台地の
さらに高いところにあるからか
あべのハルカスが見えるだけですね。

西日の射すほうにある通天閣は可愛く見えます。
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思ったより広大な墓地です。



「天神山」という上方落語があります。

この一心寺の墓地で
花見にあらず墓見でいっぱいやっていた
変わりものが「されこうべ」を拾ってきます。

その遺骨が夜中に妙齢の女性になって
いっしょに暮らすというはなし。

江戸の落語では
ずばり「墓見」で通していますが。

それを聞いた頭のビスが数本はずれている男が
「女!おんな!」と探しに行くのはお約束ごと。

でも!そう簡単に
妙齢の女性の遺骨はありません。



なぜか噺(はなし)が複雑になります。
場面が安居神社になります。

一心寺の北の東西の坂・逢坂を西に下り
陸橋に上がって見返ると。
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右手奥!坂の上の
南側の緑のあるところが一心寺。
左の樹々のあるところが安居神社。
安居天満宮ともいいますが。

建てものだらけですが
ほんのこの前まで一帯が森だったのでは。

坂を下りてしまったので!もう一度上ります。
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この崖で頭の弱い男は
捕らわれたキツネ(狐)を
なけなしのカネで買い!開放してやります。

そのキツネが人間の女性に化けてきて
女房に納まるというストーリィ。



遺骨に回向すると
お返しにやってくるという噺(はなし)は
他にもあるような。
「野ざらし」(上方では骨つりかな)とか。

明の笑府に「学様」というはなしがあります。

やはりさらされている白骨をふびんに思い
ていねいに埋めた男のところに
「妃(ひ)」が現れます。
楊貴妃なんですね。

隣の男もまねをすると
「飛(ひ)」が訪ねてきます。
三国志の猛将軍の張飛です。

お礼に「尻」を貸そう!と。

天保の「落噺仕立ておろし」に
この笑府の「学様」を翻訳してあるそうな。

それが原話ということになっていますが
宇井無愁の考察では
4 世紀の中国に
すでにこの手のはなしはあるといいます。

そればかりではなく
髑髏報恩譚と
髑髏復讐譚のふたつの大別され
日本をはじめ
世界中に無数にあるというのですが。



安居神社は真田幸村の終焉の地です。
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幼児のかん(癇の虫)をしずめる
「かんしずめの井」でも
大衆に支持されていたようでしたが。

上町台地の森は消えて
名水が噴き出ていた井戸もほとんど枯れて
昔日の面影はありません。
ああ!神社の境内の立ち入り禁止の崖下に
「かんしずめの井」が見えます。
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小さなあじさいがひっそりと咲いていました。

髑髏報恩譚なんて
ここではもう
だれも考えもつきませんね。



(六世笑福亭松鶴ネタ速記/)
(興津要編/古典落語/)
(永田義直編著/古典落語事典/)
(松枝茂夫編訳/歴代笑話選/)
(宇井無愁著/落語のみなもと/等参照しました)
(敬称略)
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