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除夜の鐘 ワンダーランド [はなしのはなし 食えぬ梨]

なん度「除夜の鐘」を聞いたのだろう。
年の数だけ遭遇したはずなのに
細かい記憶がない。

最近は京都の知恩院の
試し撞(つ)きだけに行って!
本番(!)どきには
こたつでうたた寝していたり!情けない。

関西にきてからは
四天王寺に多く行っているかも。
四天王寺には撞く鐘がみっつある。
それぐらいしか認識がないが。

家の近くの「たなべ不動尊」に
撞きに行ったこともある。

北御堂や南御堂にも行っているはず。
いずれも!単独行動だった!たぶん。
はは!頼りない。

生来!ひとづきあいが苦手で
くるものには避けて!
去るものには背を向けて!
それで寂しいとは思わない変な性格。

それでも!
ふたりで行ったこともないではない。

京都の百万遍の知恩寺で撞いたことがある。
記憶がたしかなら!
除夜の鐘を撞き終わった後に
だれでも自由に撞けたような。

同道したかの女は
大柄で明るい!セクハラもモラハラも
笑い飛ばす女傑(?)だった。

2、3 撞かせてもらって
深夜の街を!南へ!南へ!
あかりを求める夏の蛾のように
八坂神社あたりまで歩いたような。

「おしっこ~!
「トイレ~!
なんて!酔っ払って叫んで歩いた。
その後!どうしたのやら。

闇の中にしゃがんで用を足している
今!かの女の白い尻が浮かぶが
後に脳が勝手に作った画像かも知れない。

逆に暗くて寒い思い出は寒山寺。
中国の蘇州。
私のロングコートに
すっぽり入れて歩けそうなほどの
小柄な女の子と!
ことば少なに安宿で抱き合ったまま!
寒山寺の鐘を聞いた。

そんな気がするだけで
ホントに鐘が鳴っていて!
聞こえたのかどうか!
思い出に自信がない。

「わけあり」のカップルだったから
よけいに風が冷たかったのか
その前後のことはほぼ忘れている。
人影のない夜の道に
焼き芋を売るおじさんがいたような。

手帳に詩らしきものを書いていた。

異国寒包手抱肩
  いこくはさむし
  てをとり かたをいだいても
漁火細揺消不眠
  ぎょか ほそくゆれてきえ ねむれず
月落烏啼寒山寺
  つきおち からすないて かんざんじ
地獄鐘声聴呆然
  じごくのしょうせい ぼうぜんときく

中唐の張継の「寒山寺」を
盗作しただけだが
今はそんな漢字を並べてみる根気も
詩心もない。

「月落」!?
晦日(みそか)に月はおかしい。
初めから出ていない!はは。
もっとも旧暦のなん日だったのやら。

そうそう!まだあった。
京都の清水寺で
なんとなく!ほっこりする思い出。

清水寺の除夜の鐘の
一般参加は整理券が必要だった。
1 枚だけ入手していたら
「行きたい」といって
近づいてきたひとがいた。
スレンダーで美女の範ちゅうに入るひと。

清水寺では
複数のひとで撞くことになっていた。
単独できたひとは
知らないひとと組まされていたような。

並んでいたのは 107 番目。
最後の 108 番目は僧侶たちが撞く。

並びの関係からか
残っていたのは!ふたりだけだった。

「じゃ!いってらっしゃい!」と
かの女の背をたたいたら
「ご夫婦でどうぞ」と便宜を図る声。

「いいんですか!

一瞬!かの女がかたまり
そして!かすかに笑みを
浮かべたように見えた。

僧侶たちが「いいご夫婦ですね」と
お世辞をいってくれ
私のカメラをとり
シャッターを切ってくれた。

ふたりで遊んだことのない仲だったが
急に親しくなったような気がした。

それらのできごとは!
もう!ひと昔以上前のこと。

ん!?
ワンダーランド!
アリス・イン・ワンダーランド
(Alice's Adventures in Wonderland)!?

ワンダーランドということばが
閃光のようによみがえった!今!

ずっと!もっと!もっと前に
奈良の東大寺の除夜の鐘を撞いた。
たしかにふたりで撞いた。

若さがみなぎっていた時代!
その後!近鉄と京阪を乗り継いで
京都の伏見稲荷に行き!
千本鳥居をのぼった。

そのころの鉄道各社は
終夜運転をしていた。

その後!
えいでん(まだ!旧社名だったかも)で
鞍馬に行き
山の上から初日の出を拝む計画だった。

が!はしゃぎ過ぎて!睡魔に襲われた。
さすがに京都の夜は寒い。

それまで深い仲ではなかったのだが
三条大橋のたもとの
ラブホテル街に行くことに
ふたりともためらいはなかった。
が!どこも満室である。

しかたがない!ホテル街を周遊する。
そんなカップルがたくさんいて
10m おきぐらいの間隔でつづいて
おなじ方向にぐるぐる回っていた。

目の前で「空」のランプがついた!
幸運だった!

そしてベッドになだれ込んだのだが
30 分も休まないうちに
精気がよみがえった。

白い!いや!
透き通るような乳房があった。
もちろん初めて見るかの女の裸だ。

血管が神秘的!
唐突に!なぜか!そのとき
「ワンダーランド」の単語が浮かんだ。

「アリス」を思った。
なんの脈絡もないのに
アリスの不思議な国(ワンダーランド)に
吸い込まれるような錯覚に陥った。

色の白いひとには普通に見える血管に
あんなに魅入られるとは!

田辺聖子作の「女は太もも」に
「女のふとももって
「こない太いのんか。
というくだりがあるが。
肥満のひとでもないのに
男の中には女性のふとももが
「太うて白うて
と!感動するものもいるようだ。

白いのなら!そのひとは
血管には感じなかったのだろうか。

あのひとの太ももも白かったはずだが
まったく思い出せない。

観察力も記憶力も弱く
ひとの顔を覚えるのは苦手。

私の薄情な性格もあり
かの女たちの容姿も
微妙に変化していたら
もう!街角で出会っても
だれにも気づかないかも知れない。

でも!
「ワンダーランド」のことばを
思い出してから
あの透き通った乳房!
あの妖しい血管の幻影がついてくる。

新しい出会いもないまま幾星霜。
今年は幻影の見える「除夜の鐘」になる。



(これはフィクションです)
(敬称略)
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