お葬式 高速公路出入口 [はなしのはなし 食えぬ梨]
※
母が亡くなったとの知らせ。
新型コロナウイルス禍もあって
10 年ばかり会っていませんでしたが。
「親不孝ものめ!
しょんべん小路の吹きだまりの奥の
しけた居酒屋の隅で
年には不足のないおね~さん方に
叱られたことがありますが。
反論すれば
てんで勝手にしあわせを追及するほうが
エネルギーのムダが少ないのでは。
イリオモテヤマネコの母猫は
子猫を “猫可愛がり” します!猫ですから。
ある日!突然!母猫は子猫を
パンパンパンとたたきます。
猫が豹変します。
ヒョウだってネコ科です。
子猫はけげんな顔をします。
が!母猫は重ねてパンチをくりだします。
子猫はそのときがきたことを知り
一目散に走りだします。
2 度と振り返ることもなく!去ります。
振り向かない別れが
双方最善のしあわせなのです。
干渉しあえばいいこともあるけど
軋轢(あつれき)も生みます。
いいとこ取りだけはできません。
「あんたはヤマネコか!?
「霊長類はそんなことはしないの!
「人間って霊長類なの?
「あんたは爬虫類だぁ!
※
ともかく大変です。
父のときのように
分不相応な大きな(!)葬儀を
しなければならないのでしょうか。
「家族葬にします。
わが親族を仕切っている実妹が宣言します。
ああ!よかった。
でも!油断してはなりません。
おどけた口調で探りを入れます。
「そんで!ひとり
「百万円ほど用意すればいいの?
「いらない。
母は葬式代を残していたのだそうな。
「おカネがあまっているのなら。
あまっていません!
じぇんじぇんあまっていましぇ~ん。
「野の花でも段取りしてくるか
「お茶菓子でも買ってきなさい。
どうでもいいことですが
どうして妹は
私に上からものをいうのでしょう。
実弟がいいます。
「それは社会的信用力と金力と
「行動力と思いやりの全部に
「大きな差ができているからだよ。
ぐうの音もでません。
※
「家族葬なのにこんなに呼ぶの?
「おばあさん(母)を親のように
「慕ってくれていたひとはみんな家族です。
従姉(いとこ)もいいます。
「私は年に 2、3 度しか
「会いにこられなかったけど
「2、3 か月おきに
「シフォンケーキを
「持参していたひともいるよね。
だれだ!そんな生意気(!)なヤツは!
重ねていいます。
「あんたは実の子じゃないの!
「この親不孝もの。
ここでも袋だたきにあいそう。
※
「声をかけないのに
「悔やみにこられたひとの対応は
「あんたにまかすから!しっかりね。
へ?!
「香典は丁重にお断りすること。
「重ねて差し出されても返すこと。
「3 度目に押してきたら!受け取ること。
は!?
どうしても置いて帰るひとがいるそうな。
そんなひとはどこにでも構わず置くとか。
ある家では
玄関先のサツキの上に置かれたそうな。
後からきたひとがその上に置いて
垣根が香典置き場になったとか。
ひぇ~!
すごい町じゃのぉ。
※
読経が終わりました。
「お通夜!頼みます。
父のときとおなじになりました。
ま!これも私の親孝行でしょうか。
「あの!お酒は?!
まったくアルコールがないのです。
父方も母方も大酒飲みだったのに
だれも飲まない一族になっていました。
甥(おい)がいいます。
「コンビニに行ってきます。
「新ジャンルのビール(?)でいいから。
「サントリーでいえば金麦とか。
甥は「プレミアム・モルツ」を!
それも!その中で高いほうのビールを
かかえて帰ってきました。
「おばあちゃんのために!
「いいビール飲んでください。
さすが!妹の子。
思いやりがあるのですね。
さて!することがありません。
たいてい!時間があれば
どこでも徘徊しているのですが
お通夜ではそうもいきません。
たてつづけにビールをあおるから
おしっこに行くぐらい。
警備のひとも帰って
大きな斎場でひとりになりました。
隣の部屋のお通夜かお葬式は
みんな家に帰っています。
斎場の広い通路にペタペタと
自分の足音だけが響きます。
あまり気持ちのいいものではありません。
※
道具も機器も本もなにもないから
五七五でも頭の中に作ってみますか。
「小春日が 暮れてひとりの 母の通夜
エログロがなければ
私の句らしくないですね。
先日!あるお大尽の
ご母堂が亡くなられました。
満 100 歳だったそうです。
辞世の句が
「夜長なり 落つる木の実を 数えたり
家族は刀自が
俳句を作ることを知らなかったそうな。
おそらく 90 歳を過ぎてから
新聞に投句していたらしい。
上掲の句は新聞に載った最後の句だから
辞世の句と私が勝手に決めたのですが。
満 100 歳のときには
「過去ありて 未来ありけり 春近し
が!載っているとか。
句がすなおです。
奇をてらわない!
けれんみがないのが俳句かも知れません。
「母の通夜 こおろぎも寝て 朝まだき
※
夜が明けると
妹がおにぎりとみそ汁を持ってきました。
「これ!なくさないように。
生命保険証書です。
母が私を受取人にしてかけていました。
一瞬!目頭が熱くなりました。
親不孝ものは 5 秒くらいですが。
「ええっ?!こんなにたくさん!
たぶん!まっとうな家では
タンス預金ぐらいな金額でしょうけど
尾羽うち枯らしているものは
腰を抜かしかけました。
「みんなで分けようよ。
「みんなの分!それぞれあるの。
「おなじ金額なの?
「いやらしいことをいうんじゃない。
「おばあさん(母)が
「差をつけるはずがないじゃないの。
証書がヨレヨレして!
文字がにじんでいます。
私の眼が濡れているのじゃなくて
水害にあったのだそうな。
「あんた!台風で浸水したとき
「心配のでんわもなかったよね。
「ええ!水害のことなんか!
「今!初めて聞いたよ。
「ニュースで流れていたでしょうが。
「この!親不孝もんが!
※
「喪主がヨロヨロしているから
「喪主の代行をすべてすること。
喪主の弟は大病をした後で
杖にすがって!ヨロヨロしています。
「あんたは口が減らないから。
それはあなたもいっしょ!
きょうだいは悪いところがおなじ。
「挨拶は要求があればみんなすること。
「あの!それは
「元・宝塚の “ 風さやか” のように
「強めに抑揚をつけるほうがいいの?
「人間国宝の “ 桂米朝” 口調がいいの?
「フツーがいいの!
「短くね。
「ウケねらいはするんじゃないよ。
よくもまぁ!ぽんぽんいうものです。
長幼の序はないのかよ。
聞いてもムダですね。
※
火葬が終わって!まだあたたかい遺骨を
喪主の代わりに抱いて檀寺に行きます。
初七日の法要をお願いするのです。
お寺さんがあわてています。
数人で行くと連絡していたのに
みんなついてきたからです。
いいひとばかりですね。
「今日のあいさつには
「どれもスケベなこと
「いいませんでしたね。
耳元で甥が冷かします。
「そんなこといってごらん
「あなたの母親に殺されるよ。
長い 2 日が終わり
寺の境内に出ると
つるべ落としの太陽が沈むところでした。
「お墓に参って行く?!
妹がいいます。
わが家の墓地はお寺さんから
10 分も歩けば行けます。
「もう日が暮れるから!また。
「早いうちにお墓を見に行きなさいよ。
墓地の石垣が崩れそうだといいます。
付近の墓地はどこも整備・改修していて
わが家の墓地だけが
無縁のようになっているとか。
「それも自然に還ることだから。
「なにをのん気なこといっているの!
「崩れた石や!先祖のお骨が
「道にころがりでたら
「笑ってすまなくなるよ。
「あ!あの保険金を出すから直してよ。
赤貧洗うがごとし!
おカネは 1 円でもほしいけど
ここはやせがまんしても
襟をただすときかも。
「ま!納骨のときにはなしあおうよ。
※
「家の処分を考えておいて。
妹は嫁いで姓を替えているのに
実家のあれこれを心配しています。
すまないことです。
「家は売ろうよ。
「売れないよ。
「売りに出ている古い家!
「うちより条件がよさそうなのに
「まったく売れていないよ。
更地(さらち)にすれば
庭も畑の足して少々面積がとれるから
少しは売りやすいかも。
それはそれで
古家の処分費が半端なくかかりそう。
ただでいいから
ほしいひとにあげるほうがいいような。
「ご先祖」は小さな高瀬舟を 1 艘引いて
この地にきたのだそうな。
百数十年前のこと。
引きながら川をさかのぼるご先祖の
モノクロの絵が脳裏に浮かびます。
そんな絵!見たことがないのに。
身を粉にして働き
爪に火をともして貯めて
今の家の敷地を入手したようです。
それを処分するとは!
それに墓地まで放棄しかねないとは!
なまけものの子孫ばかりです。
「一番の不肖の子孫は、、、。
「みなまでいわなくても。
「みんな!あたいが悪いのよ。
※
「空港まで乗って行きませんか。
レンタカーの
従弟(いとこ)たちや甥たちが
声をかけてくれます。
「新幹線の駅まで送るよ。
従姉妹(いとこ)たちは
タクシーを呼んでいます。
飛行機にも新幹線にも
乗れる身分ではないのです。
ひとりバス停に行きます。
あ!?
切符売り場がなくなっています。
お門違いかも知れないけど!
周囲にだれもいないので!
鉄道の駅まで聞きに行きます。
「スマホで
「チケットを購入してください。
スマホを持っていません。
バスがやってきました。
「空いている席に座ってください。
「予約のひとがきたら替わってください。
肩身の狭いこと。
祖母の葬式のときに
携帯電話を持っていたのは
私だけだったような。
父が死んだときには!さっそうと
パソコンなんぞをかかえていたのに。
今では普及しているなんの機器もなく
世間から取り残されて久しい。
※
細切れでも!
いつでも寝ている生活なのに
この 2 日!あまり寝ていません。
でも!全然寝られません。
バスのつぎの停留所の表示も
4 か国語になっていますか。
隔世の感があります。
「インター」ですか。
「インターチェンジ」の略ですか。
思えば
コンビニだのマックだのコロナだの
なんの法則も脈絡もない略し方で
通じる日本はすごい。
単一民族の
以心伝心のなせるワザでしょうか。
この国に産んでもらってよかったような。
感謝しましょう。
「インター」は中国語では
「高速公路出入口」ですか。
なんの役にも立たないことを
ただ!めぐらすだけでどうします。
実(じつ)のないことだけに終始して
恥をかきつづけて幾星霜。
やっぱり私は
故郷にも先祖にも思い出にも
後ろ指さされて生きて行くのが
似合うようです。
まぁ!いい。
人間到処有青山。
(じんかん いたるところ せいざんあり)
※
(これはフィクションです)
(モデルはありません)
(敬称略)
母が亡くなったとの知らせ。
新型コロナウイルス禍もあって
10 年ばかり会っていませんでしたが。
「親不孝ものめ!
しょんべん小路の吹きだまりの奥の
しけた居酒屋の隅で
年には不足のないおね~さん方に
叱られたことがありますが。
反論すれば
てんで勝手にしあわせを追及するほうが
エネルギーのムダが少ないのでは。
イリオモテヤマネコの母猫は
子猫を “猫可愛がり” します!猫ですから。
ある日!突然!母猫は子猫を
パンパンパンとたたきます。
猫が豹変します。
ヒョウだってネコ科です。
子猫はけげんな顔をします。
が!母猫は重ねてパンチをくりだします。
子猫はそのときがきたことを知り
一目散に走りだします。
2 度と振り返ることもなく!去ります。
振り向かない別れが
双方最善のしあわせなのです。
干渉しあえばいいこともあるけど
軋轢(あつれき)も生みます。
いいとこ取りだけはできません。
「あんたはヤマネコか!?
「霊長類はそんなことはしないの!
「人間って霊長類なの?
「あんたは爬虫類だぁ!
※
ともかく大変です。
父のときのように
分不相応な大きな(!)葬儀を
しなければならないのでしょうか。
「家族葬にします。
わが親族を仕切っている実妹が宣言します。
ああ!よかった。
でも!油断してはなりません。
おどけた口調で探りを入れます。
「そんで!ひとり
「百万円ほど用意すればいいの?
「いらない。
母は葬式代を残していたのだそうな。
「おカネがあまっているのなら。
あまっていません!
じぇんじぇんあまっていましぇ~ん。
「野の花でも段取りしてくるか
「お茶菓子でも買ってきなさい。
どうでもいいことですが
どうして妹は
私に上からものをいうのでしょう。
実弟がいいます。
「それは社会的信用力と金力と
「行動力と思いやりの全部に
「大きな差ができているからだよ。
ぐうの音もでません。
※
「家族葬なのにこんなに呼ぶの?
「おばあさん(母)を親のように
「慕ってくれていたひとはみんな家族です。
従姉(いとこ)もいいます。
「私は年に 2、3 度しか
「会いにこられなかったけど
「2、3 か月おきに
「シフォンケーキを
「持参していたひともいるよね。
だれだ!そんな生意気(!)なヤツは!
重ねていいます。
「あんたは実の子じゃないの!
「この親不孝もの。
ここでも袋だたきにあいそう。
※
「声をかけないのに
「悔やみにこられたひとの対応は
「あんたにまかすから!しっかりね。
へ?!
「香典は丁重にお断りすること。
「重ねて差し出されても返すこと。
「3 度目に押してきたら!受け取ること。
は!?
どうしても置いて帰るひとがいるそうな。
そんなひとはどこにでも構わず置くとか。
ある家では
玄関先のサツキの上に置かれたそうな。
後からきたひとがその上に置いて
垣根が香典置き場になったとか。
ひぇ~!
すごい町じゃのぉ。
※
読経が終わりました。
「お通夜!頼みます。
父のときとおなじになりました。
ま!これも私の親孝行でしょうか。
「あの!お酒は?!
まったくアルコールがないのです。
父方も母方も大酒飲みだったのに
だれも飲まない一族になっていました。
甥(おい)がいいます。
「コンビニに行ってきます。
「新ジャンルのビール(?)でいいから。
「サントリーでいえば金麦とか。
甥は「プレミアム・モルツ」を!
それも!その中で高いほうのビールを
かかえて帰ってきました。
「おばあちゃんのために!
「いいビール飲んでください。
さすが!妹の子。
思いやりがあるのですね。
さて!することがありません。
たいてい!時間があれば
どこでも徘徊しているのですが
お通夜ではそうもいきません。
たてつづけにビールをあおるから
おしっこに行くぐらい。
警備のひとも帰って
大きな斎場でひとりになりました。
隣の部屋のお通夜かお葬式は
みんな家に帰っています。
斎場の広い通路にペタペタと
自分の足音だけが響きます。
あまり気持ちのいいものではありません。
※
道具も機器も本もなにもないから
五七五でも頭の中に作ってみますか。
「小春日が 暮れてひとりの 母の通夜
エログロがなければ
私の句らしくないですね。
先日!あるお大尽の
ご母堂が亡くなられました。
満 100 歳だったそうです。
辞世の句が
「夜長なり 落つる木の実を 数えたり
家族は刀自が
俳句を作ることを知らなかったそうな。
おそらく 90 歳を過ぎてから
新聞に投句していたらしい。
上掲の句は新聞に載った最後の句だから
辞世の句と私が勝手に決めたのですが。
満 100 歳のときには
「過去ありて 未来ありけり 春近し
が!載っているとか。
句がすなおです。
奇をてらわない!
けれんみがないのが俳句かも知れません。
「母の通夜 こおろぎも寝て 朝まだき
※
夜が明けると
妹がおにぎりとみそ汁を持ってきました。
「これ!なくさないように。
生命保険証書です。
母が私を受取人にしてかけていました。
一瞬!目頭が熱くなりました。
親不孝ものは 5 秒くらいですが。
「ええっ?!こんなにたくさん!
たぶん!まっとうな家では
タンス預金ぐらいな金額でしょうけど
尾羽うち枯らしているものは
腰を抜かしかけました。
「みんなで分けようよ。
「みんなの分!それぞれあるの。
「おなじ金額なの?
「いやらしいことをいうんじゃない。
「おばあさん(母)が
「差をつけるはずがないじゃないの。
証書がヨレヨレして!
文字がにじんでいます。
私の眼が濡れているのじゃなくて
水害にあったのだそうな。
「あんた!台風で浸水したとき
「心配のでんわもなかったよね。
「ええ!水害のことなんか!
「今!初めて聞いたよ。
「ニュースで流れていたでしょうが。
「この!親不孝もんが!
※
「喪主がヨロヨロしているから
「喪主の代行をすべてすること。
喪主の弟は大病をした後で
杖にすがって!ヨロヨロしています。
「あんたは口が減らないから。
それはあなたもいっしょ!
きょうだいは悪いところがおなじ。
「挨拶は要求があればみんなすること。
「あの!それは
「元・宝塚の “ 風さやか” のように
「強めに抑揚をつけるほうがいいの?
「人間国宝の “ 桂米朝” 口調がいいの?
「フツーがいいの!
「短くね。
「ウケねらいはするんじゃないよ。
よくもまぁ!ぽんぽんいうものです。
長幼の序はないのかよ。
聞いてもムダですね。
※
火葬が終わって!まだあたたかい遺骨を
喪主の代わりに抱いて檀寺に行きます。
初七日の法要をお願いするのです。
お寺さんがあわてています。
数人で行くと連絡していたのに
みんなついてきたからです。
いいひとばかりですね。
「今日のあいさつには
「どれもスケベなこと
「いいませんでしたね。
耳元で甥が冷かします。
「そんなこといってごらん
「あなたの母親に殺されるよ。
長い 2 日が終わり
寺の境内に出ると
つるべ落としの太陽が沈むところでした。
「お墓に参って行く?!
妹がいいます。
わが家の墓地はお寺さんから
10 分も歩けば行けます。
「もう日が暮れるから!また。
「早いうちにお墓を見に行きなさいよ。
墓地の石垣が崩れそうだといいます。
付近の墓地はどこも整備・改修していて
わが家の墓地だけが
無縁のようになっているとか。
「それも自然に還ることだから。
「なにをのん気なこといっているの!
「崩れた石や!先祖のお骨が
「道にころがりでたら
「笑ってすまなくなるよ。
「あ!あの保険金を出すから直してよ。
赤貧洗うがごとし!
おカネは 1 円でもほしいけど
ここはやせがまんしても
襟をただすときかも。
「ま!納骨のときにはなしあおうよ。
※
「家の処分を考えておいて。
妹は嫁いで姓を替えているのに
実家のあれこれを心配しています。
すまないことです。
「家は売ろうよ。
「売れないよ。
「売りに出ている古い家!
「うちより条件がよさそうなのに
「まったく売れていないよ。
更地(さらち)にすれば
庭も畑の足して少々面積がとれるから
少しは売りやすいかも。
それはそれで
古家の処分費が半端なくかかりそう。
ただでいいから
ほしいひとにあげるほうがいいような。
「ご先祖」は小さな高瀬舟を 1 艘引いて
この地にきたのだそうな。
百数十年前のこと。
引きながら川をさかのぼるご先祖の
モノクロの絵が脳裏に浮かびます。
そんな絵!見たことがないのに。
身を粉にして働き
爪に火をともして貯めて
今の家の敷地を入手したようです。
それを処分するとは!
それに墓地まで放棄しかねないとは!
なまけものの子孫ばかりです。
「一番の不肖の子孫は、、、。
「みなまでいわなくても。
「みんな!あたいが悪いのよ。
※
「空港まで乗って行きませんか。
レンタカーの
従弟(いとこ)たちや甥たちが
声をかけてくれます。
「新幹線の駅まで送るよ。
従姉妹(いとこ)たちは
タクシーを呼んでいます。
飛行機にも新幹線にも
乗れる身分ではないのです。
ひとりバス停に行きます。
あ!?
切符売り場がなくなっています。
お門違いかも知れないけど!
周囲にだれもいないので!
鉄道の駅まで聞きに行きます。
「スマホで
「チケットを購入してください。
スマホを持っていません。
バスがやってきました。
「空いている席に座ってください。
「予約のひとがきたら替わってください。
肩身の狭いこと。
祖母の葬式のときに
携帯電話を持っていたのは
私だけだったような。
父が死んだときには!さっそうと
パソコンなんぞをかかえていたのに。
今では普及しているなんの機器もなく
世間から取り残されて久しい。
※
細切れでも!
いつでも寝ている生活なのに
この 2 日!あまり寝ていません。
でも!全然寝られません。
バスのつぎの停留所の表示も
4 か国語になっていますか。
隔世の感があります。
「インター」ですか。
「インターチェンジ」の略ですか。
思えば
コンビニだのマックだのコロナだの
なんの法則も脈絡もない略し方で
通じる日本はすごい。
単一民族の
以心伝心のなせるワザでしょうか。
この国に産んでもらってよかったような。
感謝しましょう。
「インター」は中国語では
「高速公路出入口」ですか。
なんの役にも立たないことを
ただ!めぐらすだけでどうします。
実(じつ)のないことだけに終始して
恥をかきつづけて幾星霜。
やっぱり私は
故郷にも先祖にも思い出にも
後ろ指さされて生きて行くのが
似合うようです。
まぁ!いい。
人間到処有青山。
(じんかん いたるところ せいざんあり)
※
(これはフィクションです)
(モデルはありません)
(敬称略)
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