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京都会議 中止 [はなしのはなし 食えぬ梨]

4 年に 1 度の世界大会が中止になりました。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のため
空と海の航路が寸断され
人の流れがなくなったからです。

わたしたち「毛ジラミ」の唯一の世界大会。
今年は日本の京都で開催予定でした。
略称・京都会議。

人の毛にすがって移動するので
人の流れがなければ
京都までたどりつけません。
これでは会議になりません。

「さっそく中止を各国に連絡しよう。

みなさん!あちこちの空港で足止めの模様です」

「ん!?インド代表はまだ立っていません。
「そのうち行こうと思っていたといっています。

フィリピンもです」
約束通り行くのは失礼という慣習です」

「ブラジル代表はドタキャン専門です。

チリは会議があることさえ忘れています」

「アメリカ代表は大国ですから
「小国を待たせるのが当然という態度です。



今年の会場は
花街・五番町の置屋「朝龍(あさたつ)」の
舞妓の「朝音(あさね)」ちゃんの股間です。

住みづらい世の中です。
各国の人間の女性は競って
アンダーヘアを剃ってしまうので
絶滅した民族多数。

日本の女の子も処理する人が 60% を越え
大変なのですが!舞妓は大丈夫。
剃ったらあかんのどす。
男はんに見せる商品ですから。

童女が禿(かむろ)になり
芸を習うようになれば舞妓。
舞妓は数えで 13 歳で水揚げ。
よくは知りませんが男はんと寝て
それから髪をバッサリ切って
鬘(かつら)を着用して芸妓になります。

今の五番町には禿はいません。
いきなり舞妓どす。

その舞妓になるのも
義務教育を経てからじゃないとあかんそうで
昔なら旦那がついて 2、3 年は経つ芸妓の年令!
たぶん立派なヘアのおとなでやってきます。

五番町は年々縮小して行き
芸妓の数は 20 名。
しばらくいなかったのですが
朝音は 3 年ぶりの舞妓です。

そんな訳で集合場所の紛れが少なく
頭髪も腋毛も陰毛も十分あるはずの
朝音の股間を会場にしたのですが。



「すでに到着している代表はどこかな。

ヨーロッパの毛ジラミ族が少々」

「人まかせなのでヨーロッパを転々として
「たまたま着いたヒースロー空港で
「3 日も仮眠していた日本の女の子に
「あちこちからきた各国代表が
「偶然!つぎつぎにもぐり込めて
「運よく関西空港に着いたといっています。

せっかくだから観光でもしてもらおう」

「今夜!朝音がお座敷に行くから
「芸を見ましょう。
「みなさん!よく見えるように
「頭のほうへ移動してください。

頭には「頭ジラミ」の共和国があります。

「すみません!頭ジラミさん。
「長居はしませんから
「少し席を貸してくださいね。

頭ジラミは長身でほっそり。
毛ジラミはずんぐりむっくり。

似ていても
たとえ惚れてもセックスはできません。
あそこの形が違ってしまいました。

類人猿でいえば
チンパンジーとゴリラみたいなものかな。

頭ジラミと毛ジラミは DNA で推察すれば
300万年くらい前の先祖は
共通かも知れません。

人類の全身にあった体毛が
どんどんなくなり
頭と股間の毛が完全に分離したころでしょうね。

陰毛の研究は毛ジラミの研究でもあります。
ここだけのはなし!
よそに行っていわないようにね。



お座敷では客も芸妓も
都都逸(どどいつ)を歌っています。
なんでもするんですねぇ。

 入れておくれよ かゆくてならぬ
 私ひとりが 蚊帳(かや)の外

「お分かりになりますかな。

 きみは野に咲く あざみの花よ
 見ればやさしや 寄れば刺す

「ヨーロッパ族でも笑えますか。

 おれとおまえは たまごの仲よ
 おれが白身で きみを抱く

「これは難しいでしょうね。
「君と黄身の重なる機微やだじゃれは
「音素の少ない日本語ならではもの。
「どこの国の毛ジラミや人が笑えるのでしょう。

「みなさん!股間に帰りましょう。
「頭ジラミたちの機嫌が悪くなりますから。



「明日はここにいるみなさんだけで
「会議をしてお別れにしましょう。

ドイツ代表が」
ランチ抜きでみっちりしようといっています」

「フランスの毛ジラミたちが
「ランチ時間を
「1 時から 3 時までとれといっています。

スペイン代表が」
ランチの後に昼寝を」
日暮れまですると主張しています」

「イギリスの毛ジラミもいっています。
「ランチはそこそこですませて
「お茶の時間をたっぷりとれと。

収拾がつきませんな」

「京都会議が流れてよかったかも
「これにアジアやアフリカや
「アメリカ大陸の連中が加わったら大変。



「ともかく今晩は休みましょう。

「ああ!なんだ!?
「朝音の陰毛の林を揺さぶるのは!
「台風と地震がいっしょにやってきた!?

水がしみ出てきた」
地震の液状化現象か!」

「大きなこんにゃくがかぶさってきた!
「林をしごいて!べとべとかきまわす~!

こんにゃくじゃない!人間の舌だろう!?」

「うわ~!山ほどのひとつ目小僧だぁ!

小僧というより入道だぁ!ひとつ目入道だぁ!」

「林をかき分け!ズボズボ入って行ったよ」

わ!いきなり抜いて引きあげたぁ!」

「いや!もどってきてまた!もぐったぜ!

水揚げが近い朝音。
高額な水揚げ料はみな置屋の収入。
置屋も支度で莫大なおカネがいりますからね。

朝音ちゃんはもう 18 歳。
置屋のおかあさん(女将)の
いいなりになる昔の舞妓の年ではありません。

ないしょ働きです。
正式な水揚げの前に
金持ちの好事家のじいさんに「売って」
カネ儲けしていたのです。

「初めて」といいながらなん人もに。
なんともはや!ちゃっかりというか。

その後に正式に大枚出してやってくる
お大尽はどうするの?!
ちょっと可哀そう。

有吉佐和子の小説「芝桜」の
舞妓の蔦代のようです。

ちなみに「芝桜」の舞台は
東京の花街ですから
舞妓に「おしゃく」のルビがあります。



そんなないしょの水揚げを
小金持ちのじいさんとしています。

「お!朝音の息が乱れてきたぞ。

苦しそうだ」

「朝音が奇妙な声をあげ出したぁ。

ほほほほ!とやせた歯茎をむき出して」
じいさんはうれしそうだけどな」

「うわわあ!洪水だぁ!
「林が水浸しになる~!
「みなさん!一時避難しましょう。

シラミは避難するにも
もそもそと時間がかかります。

「ノミはいいなぁ!
「ひと跳ねで遠くに行くことができる。

「そうだ!連れてってもらおう!

おい!ノミのおれに抱きついて」
どうすんだよ~!」

「あたしゃシラミでノミを抱く。
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