ときめきは染井吉野のさくらんぼ [うそ八百]
ときめきは 染井吉野の さくらんぼ
ふくめば苦い また夏がきた
ときめきは あのいとけない さくらんぼ
ただくるおしい また夏がきた
ときめきは きみの黄色い さくらんぼ
熟れる日もない また夏がきた
ときめきは 白いブラウス まぶしくて
捨ててしまった また夏がきた
ときめきは 花桃の実の くちづけを
うらめば恋しい また夏がきた
ときめきは 麦めしいわしの ちゃぶ台と
ほのかに思った また夏がきた
ときめきは 入道雲を 突き刺して
メタセコイアに また夏がきた
ときめきは 浮き草の花
かるがもの ひなにゆだねて
また夏がきた
ときめきは 卯の花くたし 濡れるまま
やむなと祈る また夏がきた
ときめきは 黒髪の先の 花柚(はなゆ)の香
黄泉(よみ)が許せる また夏がきた
ときめきは 七変化する 透けた肌
紫陽花(あじさい)の泣く また夏がきた
ときめきは 紫陽花の道 青い道
傘を持たない また夏がきた
ときめきは 萌黄(もえぎ)色して 鳴くほたる
ぼくには聞こえる また夏がきた
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