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タゴール・ソングスは民謡 [活動写真]

映画「タゴール・ソングス」を観ました。

「タゴール」といっても
西洋人ではないものが初めて
ノーベル文学賞を受賞した
というくらいしか知りません。
教養のないことはなはだしい。

タゴールの作品は
わが家にはどこからか到来した
半世紀以上前に発行の
くたびれた角川文庫の
「タゴール詩集」が 1 冊あるだけです。
もちろん!
日本語に翻訳されたものですが。

そもそも多くの言語がある中で
文学賞なんて
だれがどう判断するのですか。
判断できるのですか。

翻訳したのでは
原語の機微が分かるはずがないと
思ってしまうのですが。

「タヌキおやじ家康」とたったこれだけで
家康の性格を日本人なら頭に浮かべますが
直訳してもなんのことやら。

文学作品では
太宰治の「斜陽」の白足袋。

村の医者が
「白足袋をはいておられた」の
「白足袋」を
「ほわいとそっくす」と訳せるかどうか。

「ほわいとそっくす」は
寒いから履くか!くらいの
穴が開いていても構わないものを
想像するくらい。
「白足袋」は正装に近い雰囲気。
きちんとした性格を表しているのかも。



詩歌でもたとえば!
といってもなにも浮かばないのですが。
え~とね!
漢詩を日本語に訳すことを考えてみます。

唐の于鄴(武陵)の
「勧酒」という五言絶句。

勧君金屈巵
  きみにすすむ きんくつし
満酌不須辞
  まんしゃくじするを もちいざれ
花発多風雨
  はなひらけば ふううおおし
人生足別離
  じんせい べつり たる(またはおおし)

これを駒田信二訳では

さあ
この金の盃で飲んでくれ
なみなみとつぐが
遠慮なんかしないでくれ
花が咲けば雨や風が多いように
会えば別れるのが人生なのだから

日本語で訓読みしても日本語に訳しても
意味はだいたい分かっても
五言絶句の整った美しい形は
分からないではありませんか。

工夫している押韻(おういん)は
全然無視して可哀そうじゃないですか。

この漢詩には
井伏鱒二の有名な訳があります。

 コノサカヅキヲ受ケテクレ
 ドウゾナミナミツガシテオクレ
 ハナニアラシノタトヘモアルゾ
 「サヨナラ」ダケガ人生ダ

後半の 2 行がひとり歩きしています。
これはもう!訳詩とはいえない!?
日本語の独立した詩なのでは。

訳したら別のものになります!
きっと。



映画を鑑賞しましょう。

タゴールが
作詞作曲した歌は 2,000 以上あるそうな。
いわゆるタゴール・ソング。

教訓じみた歌がつぎつぎに流れます。
くり返す短いフレーズが多いような。
音感がなく
歌は歌わない!歌えない!
楽器には近寄らない!ものがいっても
説得力がないでしょうけど。

不謹慎ながら!読経みたいですね。
くり返すフレーズは
人をトランス状態にさせやすいですね。

流れていることばはなんですか。
英単語が混じっているような。
ま!日本語でもカタカナ英語が入りますから
それだけでは判断できませんが。

かんなくずのような文字が書かれています。



映画終了後
監督の佐々木美佳さんと
シタール奏者の石濱匡男さんの
トークショーがありました。
blog1.jpg

それを聞いていて少し理解ができました。

映画の中の言語はベンガル語だそうな。
ベンガル語はベンガル地方のことばですか。
しからばベンガルは
どのあたりにあるのでしょう。知らんけど。

あ!私が大阪にきたとき
夜の街のお友だちで私をアゴで使っていた
おばちゃん三人組の中のひとりに
ダッカあたりからきた恋人がいましたが
それ!ベンガル語だったのかも。

タゴールは
イギリス植民地時代のインドの人。
地主の家に誕生しています。
イギリスに留学しているのだとか。
金持ちですかぁ。
フツーのベンガル人ではないんですね。

もしかしてノーベル文学賞の選考は
英語で書かれた作品だったのですか。
ベンガル語を英訳したのでは
受賞しなかったといえば叱られますか。



タゴール・ソングは真正面にはなくても
ベンガル人の周囲にいつもあるとか。

おじさんが多い花見や宴会なんかで
「月が出た出た」とひとりが口火を切ると
みんな和して歌える
「炭坑節」を思い出しました。

普段!歌わない歌がどうして出るのでしょう。

ベンガル人の根っこにも炭坑節のような
タゴール・ソングがあるのでしょうか。

炭坑節もタゴール・ソングも
100 年前に誕生しています。

タゴール・ソングの民謡化!?

いずみたくは作曲した「いい湯だな」が
勝手に元歌と違ってきているといいます。
でも!喜んでいるようです。

歌詩も忘れられ
作者の思想も消えても
生命力のある歌。
それがかれのいう最高の歌だそうな。

スタンダード・ナンバーであり
民謡だそうな。



(タゴール詩集/山室静訳/)
(鳥飼玖美子著/歴史をかえた誤訳/)
(駒田信二著/漢詩百選 人生の哀歓/)
(いずみたく著/体験的音楽論/)参照
(敬称略)
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