SSブログ

古びてもすすけても好きなひと [わが街・大阪ブギウギ]

各社路線が集まっている新大阪駅から
南に 10 分と少々歩けば
淀川の大きな堤防に出ます。

ここは淀川の下流域!
河川敷が広大で!
特に右岸には
アシ(芦)の原が広がっています。
blog71.jpg

このあたりは太古には海の中。
やがて淀川と大和川が運んでくる土砂で
中洲や島ができて
アシが!見渡すかぎり
生い茂っていたようです。

春になるとアシの原もやせてきました。
blog72.jpg

倒れるものも多く
迷路のような小径も明るくなっています。
blog73.jpg

こんなアシはかまどにくべれば
よく燃えそうです。



難波人葦作薪
 なにわのひと あしもてたきぎとなし

朝煙暮煙熏以陳
 あしたにけむり くれてけむり
 もってふるびたり

惟有我家妻一人
 ただあり わがやのつまひとり

朝看暮看色常新
 あしたにみ くれにみるに
 いろつねにあたらし

中国の銭稲孫の詩。

中国のひとが難波(なにわ)とは?!

この漢詩は訳詩なんですね。
原詩は万葉集 2651 らしい。

難波人 葦火燎屋之 酢四手雖有
己妻許増 常目頬次吉

斎藤茂吉の訓読みでは

 なにはびと あしびたくやの すしてあれど
 おのがつまこそ とこめづらしき

だそうな。

アシの中の四阿(あずまや)が
すすけてしまうほどここに住みついている。
こんな貧しい家から逃げ出しもしない妻は
珍しくもあり!可哀そうなものだ。

あきらめと!
涙を誘う歌かと
心貧しい私は思ったのですが違うらしい。
茂吉の解釈は

なにわのひとが
葦火(あしび)を焚くので家がすすけるが
おれの妻もそのようにもう古びすすけた。
けれどもおれの妻は
いつまで経っても見飽きない。
おれの妻はやはりいつまでも一番いい。

だとか。
愛妻賛歌!?
いい年のおじさんがね。
なんだか!面白くないですね。
ひねくれていて!すみません。

それはさておき
万葉集の短歌や反歌を
平仄(ひょうそく)や
押韻(おういん)などを整えて
漢詩に訳すとは!すごいですね。

漢詩を教えたり学んだりするときには
負けずに!日本古来の短歌で
訳詩を作る努力が必要ですね。
日本人なら。

漢詩の授業なんか学ばなかった私は
生意気だけいえますが。



土手にあがりもどります。

阪急・南方駅と
大阪メトロの西中島南方駅が
交差しているあたりで
ランチして帰ります。

いろいろ見て歩いても
懐中に尋ねたら委縮してしまい
いつもの「海の家」に着きました。
blog74.jpg

税込み 600 円のランチに
落ち着きますか。はは。
blog75.jpg

しかし!口が勝手(?)に
「刺し身定食」なんぞを注文!
blog76.jpg

税込み 780 円。
ま!おいしかったから!いいですか。

みそ汁は豚汁でもないけど
豚肉片と里芋がひとつ入っていたのが
なんだかうれしい春。

明日にはアシの中で
されこうべになっていそうな民は
この程度で小さくほほえみます。



(一海和義著/漢詩一日一首/)
(斎藤茂吉著/万葉秀歌/)参照
(敬称略)
コメント(2)