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三バカ あんたが大将 [はなしのはなし 食えぬ梨]

45 の誕生日が過ぎた。
静かに過ぎた。

同期入社の中では早く係長になったけど
今では万年課長代理。
部屋の隅で 1 日中
緊急を要しない事務処理をしている。
部下はひとりもいない。
このまま定年まで行くかも。

1 度も結婚はしなかった。
愛し合っている人はいるけどね。
週に 1 度くらい!
食事をして!肌を合わせてきた。
妻のようなものだ。

結婚したら!かの女のひとり息子と
あつれきを生じかねないから
こんな仲でいいとかの女がいうから。

かの女の息子だが
オレの息子のようなものだ。
学費も留学費用もみんな出している。

その息子が婚約した。
だれでも知っている有名な
皇室とも縁のある門跡寺院の娘だ。
金満寺院として有名だから
お嬢さんの中のお嬢さん育ちだろう。

大学時代にひっかけたようだ。
女に手が早く
いく人もの女を渡り歩いたウデなら
深窓の令嬢なんか
ひよこに刷り込みを入れるより簡単。

息子が結婚したら
オレに入籍してくれというかも知れない。

それでもいいし!
このまま!老いても恋人のまま
ときどき!いっしょに入浴するだけの
関係でもいい。

でもね。
息子の婚約で今ではかの女も
ちょっとした有名人。
忙しそうで!全然会えなくなっているが。
心がつながっているから!ま!いいか。



ん!?
あれは吉田じゃないか!同期入社の。

「お~い!吉田くん!

お!竹中くんか!久しぶりだな」

「本社に転属になったのか。

4 年前にな」

「オレも 3 年前にもどってきたけど
「全然!会わなかったね。

ぼくは資料部なんだ」

「そんな部!あったっけ!?

半地下のガレージの横に」
古紙回収業者の」
倉庫のようなものがあるんだ」
その古い書類の山を崩して」
不要なものをシュレッダーにかけている」
ほぼ!不要なものだけどな」
ぼくは今!窓際族の下の窓際族!ははは」

「いや!オレも今は
「だれも口をきいてくれない窓際族なんだ。

今晩!どう?」
赤ちょうちんにでも行ってはなそうよ」



「家族とはうまくやってるの?

1 度も結婚はしていないよ」

「おなじだな。

4 年来の恋人はいるんだ」
かの女のひとり息子ともめたくないから」
籍は入れていないけど」
夫婦みたいなもんだよ」

「おなじような境遇だな。

その息子がきみも知っている有名な」
ぽんぽこ寺の娘と結婚することになって」
やっとふたりきりの生活ができそうだ」

「え?!

どういうことだ!?
オレのヨリ子とおなじ女が
もうひとりいるのか!?

ところがさ」
息子が婚約で有名になってから」
会うのを拒むんだ!かの女」

明日!大事なはなしがあるというのだ」
あおかん公園の」
噴水まできてくれというのだが」
今さら!なにをいい出すのやら」

「そんな明るいところなら
「いいはなしじゃないのかな。

いや!噴水の南側の林の中」
ぽつんと木がないところがあるんだ」
そこにベンチがひとつ」
昔はそのベンチで」
欲望にまかせたことをしていたものさ」



ヨリ子と吉田が夫婦同然!?
そんなはずはない!

いや! オレとの入籍の準備かな。
これを機会に変な関係は清算して。

先回りして
ベンチにマイクをしかけよう。
カメラは木のまたにくくりつけて
離れたくるまの中でモニターするか。



吉田がきた。

あ!やっぱり!ヨリ子だ。

別ればなしだったな。はは。

ぼくたちは夫婦じゃないか」

「寝ぼけたことをいわないで。
「ただの知り合いじゃないの!

新しい恋人ができたのか!?」

「あんたとは関係ないことよ。

分かった!じゃ!貸している 300 万円」
今すぐ!返せ!」

「知らないわよ。
「私の体をもてあそんだ代償だよ。

もてあそんではない!」
愛情表現だ」

「どこに愛があるのよ。
「100 回は寝ているわよ。
「1 回 3 万円じゃないの!
「安いものよ。
「あんなにしつこく私の体を
「裏返したり!曲げたり!逆さにしたり
「なめまわして!気持ち悪いこと!
「不足分をもらいたいくらいだわ!

吉田はおとなしそうで “変態” だったのか。
オレなんか “ぜんとるまん” だから
せいぜい鼻の穴や尻の穴に指を突っ込んだり
熟睡しているかの女の
脇の下やら足の裏をかむぐらいだ。

「それに!あんたは乳首をくわえて
「引っぱるバカなクセがあるから
「乳首が伸びたじゃないの!
「どうしてくれるの!

伸びたのは息子の授乳のせいだろう!?」

「産んだこども 4 人ともミルクだわ!



知らなかった。
こどもがほかにも!?
そんなにたくさんいたのか。
そういえば!かの女!
オレとおない年だというが
ときどき!オレより 10 歳は上のような
状況証拠に出くわしたな。

ま!愛があるからいいけどな。

お!オレたちとおなじくらいの
中年の男がきた。

『ヨリ子!なんだこの男は!?

この男とはなんだ!?」
おまえこそ!だれだ?!

『オレはヨリ子の恋人だ。

「ちょっと!冗談いわないでよ。
「あんたなんかゆきずりの男じゃないの。

『なにを!?
『夫婦になる約束で
『生活費 400 万円もとっておきながら!

「なにも約束なんかしてないわよ!

「あんたねぇ!でかいチ××ンを自慢するけど
「でかいだけでテクニックもなく
「ゴシゴシするだけだから
「擦過傷ができて
「そこから雑菌に感染して
「尿道炎になったじゃないの。

「治療費と慰謝料!まだ足らないわよ。

そうだ!おまえはただのゆきずりだ」
ぼくが恋人だ」
さっさとあきらめてしまえ!」

『おまえこそ!どこかへ行け!



ふたりともバカな男だ。

300 万円だとか
400 万円のはした金でヨリ子を抱きやがって。
オレなんか息子の学費だけで立て替え金が
1,000 万円以上だ。
ホントの恋人ならこんなもんだ。
バカなかれらには
このことを知らせないほうがいいな。
武士の情けとして。

「長乳首」と「尿道炎」が殴り合いを始めた。
ホント!バカ丸出しだな。

とめに行くか。
学生時代には野草愛好会やら
バードウォッチング同好会やらには
所属していたけど
運動部には縁になかった。
が!
高校・大学の相撲部や柔道部から
助っ人に頼まれた偉丈夫だ。
弱小部が
大会に出るときに員数が足らないときに。

練習もしないのに
2、3 人投げ飛ばしたこともある。
もっともCクラスやDクラスの試合で
相手も臨時部員だったようだったが。

よし!
目を覚ませ!おまえたちは
恋人でも愛人でもないと
しっかり認識させてやろう。

あ!今出てはまずいか!
まずいよね。
オレがホントの恋人ということが
分かってしまう。
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