枯れ野見吟行 忘れることがしあわせ

枯れ野見（かれのみ）吟行




恋いくつ　忘れることが　しあわせと
からすうりより　赤い柿の実



恋いくつ　忘れることが　しあわせと
妄想を消す　幻覚を見る



恥いくつ　忘れることが　しあわせと
はらりはらはら　さざんかが散る



恥いくつ　忘れることが　しあわせか
人はおろかで　あすをわずらう



夢いくつ　忘れることが　しあわせと
また冬がきて　笹鳴きがする



夢いくつ　忘れることが　しあわせか
せめて知りたや　空の鳥の名



恋あまた　忘れることが　しあわせと
冬晴れにとる　白いブラジャー



恋あまた　忘れることが　しあわせと
思う間もなく　百年（ももとせ）が行く



恥あまた　忘れることが　しあわせと
森の陽だまり　衣擦（きぬず）れの音



恥あまた　忘れることが　しあわせと
狂えるときは　今　ただ狂え


夢あまた　忘れることが　しあわせと
寒にも咲くか　西洋たんぽぽ



夢あまた　忘れることが　しあわせと
空に大きな　バカボンのパパ






（都会の枯れ野にて）


みなフェイク　忘れることが　しあわせと
コロナぶとりの　飲み屋は笑う


うわさなど　忘れることが　しあわせと
コロナに無策な　居酒屋に死す