アーモンドの咲くころ [うそ八百]
人の世が なつかしい
すねたまま 花の道
あの人が なつかしい
ゆるされる はずもない
風吹けば おののいて
雪降れば うずくまり
いたずらに 生きてきた
ふり向けば またひとつ
思い出が かすむ春
うたかたの しあわせは
あすもない 夢もない
ぎこちなく 寄り添えば
くちづけの 味もない
いくたびの 西行忌
さとされて 叱られて
まぼろしの 沈丁花
ふるさとは いつの日か
新しく つくるもの
流れても とまっても
花びらは 帰らない
笑うには 力なく
泣くほどの ゆとりなく
うたびとは 花に酔い
たびびとは 雲に吐き
せつなでも 眠りたい
もうひとつ またひとつ
思い出が 遠くなる
(神戸市「水辺の遊歩道・うおざき」にて)