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つっかい棒 [はなしのはなし 食えぬ梨]

「美子(よしこ)!部屋を貸して。

ママ!また大介と寝るの?!」

「うふ。

うふ!じゃないでしょ」

「ラブホに行くのは
「だれかに見られそうで心配だし。

頭が悪い!常識はない!礼儀を知らない!」
そんな男と別れなさいと」
すすめたのはママじゃないの」

「そうだったぁ!?

わたしが捨てた男を」
愛人にしたママが変じゃない」

「だって!うまいんだもの。

ベッドのテクを仕込んだのはわたしよ」

パパにばれたら!絶対に殺されるわね」

「あなただって殺されるわよ。
「パパは生娘だと信じているわよ。
「もう!なん人!男を替えたのよ。
「嫁入り前に処女を捨てるものは
「生きる価値がないといってるよ。



ああ!大介~!そこ!そこ!いい~!」
果てても!果てても」
すぐ回復するなんて!」
はたちの若さってすごいわね」

こんなおばちゃんでイヤにならないの?」

『(いいバイトです!いや)
『大好きですよ~!

あなたのおかあさんてなん歳なの?」

『43 いや 44 歳かなぁ。

(あら!わたしより若いじゃないの)
(母親より年上の女を好きだなんて)
(エラい!)
(感激!)

可愛いわね~!」
貯めていたへそくり!みんなあげたい」



「お~い!美子!入れておくれ!

あ!パパの声だわ!大変だぁ!」
どうしてここにきたのやら」

早く!はやく!逃げて!」

『どこに逃げるのです!?
『ワンルームマンションで 12 階で。
『ベランダもエアコンの室外機を
『置くだけのスペースしかないですよ。

クローゼット!ここ!ここ!」

『無理ですよ!狭すぎる!

ペットボトルのお茶を持って」
飲んだら!それにおしっこしてなさい」



『なんだ!美子がいなくて
『どうしてママがいるんだ?!
『デパートに行ったんじゃないのか!?

吉田さんの奥さんと杉坂屋に行ったんだけど」
気分が悪くなって!ここで休んでるの」

『杉坂屋なら家に帰るほうが近いだろ。

あ!熱が出たのかぼ~となって」
いつの間にか美子のところへきていたの」

『それは大変だったね。
『しかし!そのショッキングピンクの
『ハデなネグリジェはなんだ?

美子のものを借りているの」

『美子!なんかあったのか?
『小さいときから
『オレがピンクや赤の服を買ってやっても
『黒や白のほうがいいといっていたのに。

おとなになったのかな」

『逆だろ。
『それにおまえさん!パンツはどうした!?
『黒々とジャングルが透けて見えてるぞ。

(あ!大介が頭にかぶったままだわ)



あなたは同僚の方の送別会だったのでは?!」

『そうだ!最近は
『夜の宴会は自粛命令が出ているんだ。
『それで休日の昼間に茶話会が普通なんだが
『今日の幹事はワインを出しやがった。
『飲んでしまったよ。
『だれかが飲んでやらねば
『幹事の努力が報われんだろうと思って。

『しばらく公園で休んでいたんだが
『ふと!思いついて
『とぼとぼ 35 分も歩いてここにきたんだ。

『美子はどこへ行ったんだ。
『ま!いい!寝かせてもらおう。

あなた!ベッドで寝たら」

『いや!親とはいえおじさんだ。
『おじさんの臭いがついたら
『美子も生娘だ!いやだろう。

『ここに座布団を置いて毛布で寝るよ。

そんな狭いクローゼットの前より」
こちらにしたら」

『狭いよ!どこも!おなじだよ。
『ワンルームはワンルームだ。



もしもし!美子!帰ってきてよ」
酔っ払ったパパがきて」
頭にパンツをかぶっただけで」
すっぽんぽんの大介を隠した」
クローゼットの前で寝てしまったのよ」

「分かったわ。
「ビールとワインでも買って帰る。

もう飲ませないほうがいいのでは?」

「パパは謹厳実直で変人だから
「飲もうといえば
「明日の仕事に差し障りがあると思い
「断って!急いで帰るというはずよ。



「パパぁ!お酒を買ってきたよ~!

『お!美子か!どこに行っていたんだ。
『よし!せっかく娘の申し出だ!飲もう。

「飲むの?!
「帰るんじゃないの!?

『おまえが飲もうといったんじゃないか。
『ワインで乾杯だ。

「あ!そうだ!
「パパ!ビールにしようよ。
「どんどん飲もうね。

『そうだ!つまみはあるぞ。
『今日の宴会の料理の中から
『ローストビーフと笹かまぼこを
『ドギーバッグにしてきたんだ。

「私の会社の女の子がね。

『職場には女がいないといってたろ!?

「あ!最近!入社したのよ。

「そのかの女の母親がね。
「娘のマンションを借りて浮気していたの。

『ふしだらな女だな。
『それに亭主は気づかないのか!
『間抜けなやつだな。

「そこへ父親が突然訪問したのよ。

『修羅場だな!死人が出るだろ。

「ところが浮気するほどの女。
「瞬時に男を隠したの。

「酔っ払っていた父親は
「かれの隠れているクローゼットの前で
「寝てしまった!、、、そうだって。

『困ったね。

「そのうち!ビールを飲み過ぎていた父親は
「おしっこしたくなってね。

「パパ!おしっこしたくない!?

『おお!たまってきたな。
『トイレに行こうかな。

「行って!行って。

「そうしたらね!
「物干し竿が落ちてきてね。
「落ちたことにしたのよね。

『どうして室内に物干し竿があるんだ!?

「部屋干しよ。

「それでトイレの扉につっかい棒をしたの。
「こんな風に。
「パパ!押してみて!中から開けられる!?

『いや!無理だな。

「つっかい棒!固くはまって!
「とりはずすのに大変ということにしてね!
「かの女!合図したの。
「早く!服を着て!早く逃げて!
「もたもたするんじゃないの!
「頭のパンツを脱ぎなさい!

『おい!美子!だれにいってるんだ!

「そのときのかの女のセリフよ。
「早く!はやく!
「ベルトなんか外で閉めたらいいから。

『玄関ドアの音がするが?!

「ちょっとリアルに演出してみたの。
「あ!つっかい棒!とれたわよ。

『しかし!したたかな女房だな。
『その夫はバカというより!アホ過ぎるな。



美子!ちょっと廊下に」

『おい!ふたりでどこに行くのだ。

「あ!ゴミ出しの相談よ。

大変だよ!あわてて!大介!」
パパの靴をはいて出て行ったのよ」

パパがきたときに大介の靴を隠したの」
かれが逃げるときには」
パパの靴しかなかったから」
それをはいてしまったのよ」

パパの靴は黒色!」
さっき!どさくさに紛れて」
玄関においたのは大介の赤茶色の靴」

「宴会で間違えてきたことにしたら。

外の庭園でしたといっていたよ」

「どうしよう。

すりかえようよ」

「すりかえたいけどワンルームだし!
「パパは玄関を向いているし。

酔いつぶすしかないかな」



『さて!そろそろ帰るかな。

「あああ!パパ!もう少し一緒に飲みたい。

『さっき!帰れといっていたじゃないか。
『もう!お茶を飲むだけでいい。

あなた!少し寝たら」

『全然!眠気が消えたよ。

「パパ!あっちに向いて。
「見て!窓の外に鳥がいるよ。

『いいよ!鳥なんか。

「カワラヒワかな。

『そりゃ!珍しいな。

「あ!飛んで行った。

『鳥を追って下の公園に行ってみようか。

「ああ!パパ!外に出ないほうがいい!

『どうしてだ!?



『ふたりともなにをあわてているのだ?!
『落ち着きなさい。

『よし!もう 1 度
『トイレに入るから
『つっかい棒をしてみなさい。
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