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映画 土 風見章子のリアリズム [活動写真]

映画「土」を観ました。

いきなりドイツ語の字幕スーパーが出現。
長塚節の原作では
茨城県鬼怒川沿いの
小さな農村の物語ではなかったですか。

「Ich」とか「die」とか「das」とかが
いっぱい書いてあります。

早いはなし!そのみっつしか
認識しなかったのか問われれば
ま!その通りですだ。
もうドイツのノイシュバンシュタイン城で
シンデレラしていましたという
大ぼら吹きはやめますだ。
だれも信じてはいませんがね。

茨城の方言が分からない上に
ドイツ語の字幕スーパー。
根性入れて観なければ!とは思ったのですが
どうも!こういう社会派の分野は苦手で
つまらんことばかりにとらわれます。



「土」は昭和 14 年(1939)公開作品。
内田吐夢(うちだとむ)監督。
日本映画史上!写実映画の
嚆矢(こうし)といわれているそうな。

それまでの映画は
どこか歌舞伎調に
カクカクした演技ばかりのような。
リアリズムに欠けていたのですが。

たしかに素直に見やすい演技。

それがドイツ語の字幕スーパー!?

日本からフィルムが消えたのです。
すぐ大戦が始まりましたからね。
アメリカ軍の空襲のせいばかりではなく
爆薬材料に溶解されたようです。

戦後!そのフィルムが見つかったのはドイツ。
ベルリン映画祭で上映されて
博物館の倉庫に保管されていたらしい。

それでドイツ語!?

しかし!そのフィルムには粘着部分が多く
全体の半分も見られません。

その後!ロシアから完全ではないものの
それより保存状態のいいフィルムが
発見されたのですね。
それもベルリン版でしょうか。

今回の公開はそれらの合成でしょうか。



そんな不真面目な鑑賞ですが
この映画!
最初と最後が欠落しているのでは!?

唐突に始まり!
ストン!と終わりました。

母の亡き後!けなげに一家の雑用をこなす
少女・おつぎ役の風見章子のリアリズム。
今の女優と変わりませんね。
この女優さんをまったく知りませんでしたが。

あれ?!
この写実映画!
「日活多摩川撮影所」のセットとあります。

そもそも全編!
現地撮影の予定だったそうな。

早くから現地・岡田村に拠点を作り
キャスト・スタッフは泊まり込み
俳優たちは実際の農作業をしながら
方言の取得に励んだとか。

明日!クランクインの夜
原作者・長塚節の母親がきて
撤退を要求したそうな。

長塚節はそのときには
すでに鬼籍に入っていたのです。

素直に撤去して多摩川にもどり
セット撮影に切り替えたのですね。

写実を追求するのにスタジオ撮影。
その苦労は並大抵のものではなく
撮影日数と予算を大きく超過。
1 年過ぎても完成しないので
日活本社から中止命令がきたそうな。



公開したら大ヒットし
若もの層に絶大な支持を得たそうですが
やがてファシズムの嵐!
貧農が結束して生きる悲しみをほめて
戦意高揚!
日本バンザイに利用されて行きます。

監督の吐夢(とむ)は本名ではありません。
字幕スーパーでは Tomu でしたか。

トムとジェリー(Tom and Jerry)から
とったのではないですね。
時代的に重なるかと思ったのですが。

岡山で育ったのですが横浜に出て
「港のトム」と呼ばれていたかららしい。

なかなか数奇な人生で
映画監督の助手になったり
旅役者の一座に加わったり
この撮影の後でも
満洲で甘粕正彦の自決現場に立ち合ったり
共産主義の進行する中国を見ていたり。

社会の底辺を見ることが好きだったのかも。



婚礼は村全体の行事。
みんな仕事を休んで大騒ぎ。

若ものたちがたき火を囲んで
丼を持ち!なにかを食べています。

原作にある「うどん」でしょうか。

ハレの日のふるまいとして
どんな貧しい家でも
ザルとビールびんを用意していたとか。

ザルにはうどん
ビールびんには醤油が入っています。

原作では
「単純に水へ醤油をさしたしたじに浸して
「そうぞうしくうどんをすすった
とあります。

この村では醤油は貴重品だったのですね。

ふと!思いましたが
ザルに入っていたうどんはゆでたもの?!
乾麺ではないようだし。
その寒村ではどこで調達するのでしょう。
手打ちとも考えられますか。

というのは
私の貧しいこどものころに
(今はもっと貧しいぞ)
食べさせられていたうどんは
製麺所の生麺だったような
そんな気がするからです。



では!私もうどんを食べます。
今の私にもごちそうだぁ!

ゆでうどん!ひと玉 19 円です。
週になん回か 16 円になりますが。

冷やしていたうどんを氷水でほぐして
濃縮のだしを振りかけ
青ネギといっしょに食べます。
blog99うどん.jpg

真のうどん好きではないので
なにかトッピングがいるのです。

今日はいくつかふりかけが出てきたので
豊かなうどんです。



(長塚節作/土/)
(鈴木尚之著/私説 内田吐夢伝/)参照
(敬称略)
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