ぼけ防止のワクチン

ぼけ防止のワクチンを
注射することになりました。

65 歳以上の希望者から順に。
経費はみんな国が負担します。

「高田一夫さんですね。

『へい！早くぶすっとやっておくんなはれ。

「その前に少々問診を行います。
「持病はないですか？

『ジビョーねぇ。
『3 年前にまさや布袋堂に行きました。

「はい？！

『高い薬なのに！あんまり効きまへんなぁ。
『切れ痔でんねん。
『嫁はんはいぼ痔ですわ！はは。

「その痔のやまいではなく
「心臓病とか糖尿病とかですがね。

『ははぁ！それなら！ときどき糖尿病だす。

「ときどき？！

『息子の同級生のキ～やん！知りまへんか？

「知りませんよ。

『じゃりン子チエの出てきそうな
『萩ノ茶屋駅のそばのたこ焼き屋ですけどね。
『まだ 40 歳なのに
『ナニがいうことをきかんというのだすわ。
『糖尿病で。
『わたいもときどきあきまへん！
『だから！ときどき糖尿病！

「もういいです。
「打ちます。
「打ったら早く帰ってください。



『よし！これで 2 年間はぼけないな。
『しかし！口が勝手に動いて困る。
『副作用やな！これは。

『お隣の奥さんやおまへんか。
『今日も不細工な顔でんなぁ。
『いつからそんなに不細工です？！

『岡田はん！最近！
『茶臼山のラブホ街で会いまへんな。
『浮気！もうしまへんのか。

いわないでもいいことがすぐ口に出るので
みんなから嫌われてしまいました。



しかし！そんな歯に衣着せぬものいいに
はなしにくる人が増えてきました。

『息子の嫁はんと仲良くしたい？！
『やめなはれ！
『息子の嫁の代わりは星の数ほどおる！
『母親の代わりはおらん！わてだけや！
『文句をいうのなら出て行け！いいなはれ。

『きみちゃん！あの男は
『とんがらしチンコでっせ！幼児並みに。
『結婚したらあかん。
『すぐに絶対に不満がくすぶる！やめとき。

『ん？！ハゲの課長がパワハラ！？
『宴会のときに部長や専務の前で
『酔ったふりをして叫びなはれ。
『かちょ～！ぼくもぽんぽこ花嫁に連れてって！
『道頓堀の！キャバクラの！赤いネオンのとこ。
『つけは下請けの
『山田製作所に回せばいいんでしょ！？
『買春したい放題の天国に行きたいよ～！
『事実かどうかはどうでもよろしい。

なんて好き勝手に答えていると
相談者が実際に
その通りに決行することはなくても
なんとなく笑えてやすらぐものらしく
怪しい教祖みたいになってしまいました。



相談料はいらぬといっても
みな！なにがしか置いて行くようになりました。
100 円置く人！
1 万円出す人！いろいろ。
合計すれば結構な収入になります。

『副作用さまさまやな！
『当分！食うに困らないな。

ところがだんだん
人が集まらなくなってきました。

『嫁はんとはなかよく。

『課長も中間管理職として大変なんやから
『少しは理解してあげましょう。

なんて！
普通の会話しかできなくなったからです。

これはあきません。
ぼけ防止のワクチンを打ち直して
副作用を得なければ。

ところが！
ワクチンの注射は
取りやめになっていました。

まず！総理大臣から村会議員まで
注射を拒否したからです。

政治家はぼけたり
ぼけたふりをするのがショーバイ。
ぼけない薬はあってはならないのです。

それにぼけ防止の
お札を売る寺院や
怪しげな祈祷師がこぞって大反対。

結局！
国家予算で高額払ったワクチンは
廃棄されてしまいました。



「そんなもん！いくらでも出回ってまっせ。

うわさでは廃棄を請け負った会社が
横流ししていたそうな。

なるほど
Web 上にあるは！あるは。

1 万円から 1,000 万円まで
いろんな医院（？）がショーバイしています。

『1 万円というのは怪しいな。
『1,000 万円というのももったいない。
『500 万円のを打ってもらうか。
『まだそのくらいはお布施が残っている。

やれやれ！
これで副作用を待てばいいことに。



『ん！？
『詐欺師が捕まった？！
『はでに報道されているが。

『ニセ医者か。
『あれ！この間！
『注射をしてくれた医者じゃないか！
『生理食塩水を打っていた？！

『ああ！おカネを捨ててしまった。
『オレ！ぼけてしまっていたのか。